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長寿化の時代に「リノベーションまちづくり」の可能性を考える

長寿化の時代に「リノベーションまちづくり」の可能性を考える

長寿化はつらいことの方が多いのか?

日本の長寿化はとどまるところを知らず、多くの人が80年以上生きるのが当たり前の世の中になりつつあります。高齢者が増えることにより、社会保障費はふくれあがり、財源の確保もままならない状況です。KAIGO LAB でも、そういった高齢化のネガティブな側面をとりあげることが多くなっています。

確かに、介護の問題などは、個人にとっても社会にとっても、非常に苦しいことではあります。しかし本来であれば、長生きすることは、良いことのはずです。それをただ、ネガティブに考えるばかりでは、年齢差別など、おかしなことにもなりかねません。

若くして亡くなる人が減り、年をとってから亡くなる人が増える社会のことを、とくに少産少死社会(高齢者多死社会)といいます。こうした社会では、終末期医療や介護のあり方、葬儀やお墓の問題、認知症の増加とも関係する相続や後見人の問題といった、特有の課題が出てきます。

これらは、当事者からすれば、目をそらしたくなるようなつらい課題です。しかし、ビジネスとは、なんらかの社会課題の解決です。ですから、ビジネスの視点でとらえれば、これは、大きなチャンスでもあります。

ある試算によれば、60歳以上の年間消費額(高齢者市場)の規模を推計すると、2012年で100兆円、以降は毎年1兆円ずつの規模で増加するそうです。高齢化の課題先進国として、日本がつみ上げていく解決策は、必ずや東アジア諸国をはじめとして、世界に貢献するものに成長していくはずです。

長生きすることは不幸なのか?

繰り返しになりますが、そもそも長生きできるということは、本人にとっても、家族にとっても喜ばしいことのはずです。もちろんそこには「健康で自立した生活を送れるならば」といった条件が付くかもしれません。しかし、多くの人がサポート受けながらでも、長生きできることは、ポジティブにとらえられるべきでしょう。

長寿化に合わせて、私たちの人生の流れは、大きく変化していきます。20歳前後で就職して、40年ぐらい働いて、余生を過ごすという人生モデルは主流ではなくなってきています。この人生モデルでは、ほんの一部の人しか、80年以上の人生をカバーするだけの貯蓄をすることはできないでしょう。

今後は、60歳を超えても、働き方を変えながら、生きていくことになります。これを一生、働き続けなければならないと考えるのはつらいことです。しかしこれを、人生で様々なステージを経験しながら、成長し続けていくことができる人生モデルだと考えれば、そこまで悲観的になる必要はないかもしれません。

あたりまえのことなのですが、誰もが幸せに長生きできる社会を築くことが理想です。介護業界の人々は、それを支えようと、足りていない財源をやりくりして、頑張っています。それでもなお、様々な問題が発生しているのが現実です。

リノベーションまちづくりの可能性

晩婚化や未婚化により、子供をもたない人は増えてきています。つまり、歳をとっても、面倒を見てくれる人がいない高齢者が増えているということです。高齢社会白書(平成28年版)によれば、65歳以上の単独世帯は、65歳以上の高齢者がいる世帯全体の25.3%を占めています。高齢者夫婦のみの世帯も含めれば、過半数を超えて56%にものぼるのです。

これらの世帯の中には、いざとなっても頼る家族がいない高齢者も多く存在するでしょう。人と人のつながりが希薄になり、隣の住人の顔も名前も知らないような無縁社会では、このような世帯の高齢者は孤立しかねません。しかし、高齢者を孤立させてしまうと、要介護状態になりやすくなり、社会保障費を圧迫してしまいます。

それでも残念ながら、この傾向はどんどん強まっていくと考えられています。低年金、無年金であることもめずらしくないので、より一層、社会としてのサポートが必要になります。社会保障費を使った国のサポートも必要ですが、地域としていかに支え合っていくかも大切な視点でしょう。

そんな中、この現状を変えるために「リノベーションまちづくり」という取り組みが広がってきています。「リノベーションまちづくり」というのは、地域に眠っている空間資源(空き家や空き店舗)を利活用して、地域を再生していこうという取り組みです。今あるものを活かしながら、新しい使い方をして、まちを変えていくのがねらいです。

空き家や空き店舗の危険性

地方の商店街に行くと、閉店してしまったまま跡地に誰も入らず、シャッターが下ろされている「シャッター通り」を見かけることが少なくありません。これは東京23区内でも見られる状況であり、日本全国の問題です。

また、住宅街にも、長年誰も足を踏み入れていないような空き家が多数存在します。中をのぞくと、昨日まで誰か住んでいたのではないかと思うような状態で、家財道具だけが残っていたりもします。総務省の統計によれば、こういった空き家は全国に820万戸も存在し、空き家率は13.5%にものぼるそうです。

こうした空き家を放置することで、様々な問題が起こります。古くなった家屋は倒壊したり、屋根が落下したりする可能性があります。こういった場所には、ごみの不法投棄などが起きやすく、衛生面も非常に悪くなります。悪臭が発生し、害虫や害獣の問題も起こります。さらには、犯罪を誘発することもあるようです。

行政としても、これらの空き家や空き店舗に対して、様々なアクションを起こしてきました。しかし所有者さえわからない場合も多く、解決のハードルは非常に高いのが現状です。もちろん所有者がわかっていても、それを利活用する人がいなければ、整備しても意味がありませんし、財源もありません。

空き家を活用していく取り組み

こうした状況を受け、民間の空き家バンクが、空き家の所有者とそれを利活用できるプレイヤーをつなぐ取り組みが起こってきています。行政も、制度や金銭面での援助を行いながら、利活用を進めていく活動です。

たとえば高齢者のシェアハウスとしての利用もその一つです。有料老人ホームに入るには、相当な金銭的余裕が必要です。こうした余裕がない場合は、高齢者のシェアハウスは、それぞれ自立しながら生活しつつも、お互いを見守り合う場としての可能性があります。

また、高齢者が住むシェアハウスではなくても、まちに開かれたシェアハウスという利活用もできます。実際に、若者が空き家をリノベーションして住人となり、その空き家の縁側を解放して、地域の人びとの憩いの場となっているケースもあります。

このケースでは、最初は近所に住む高齢者が、その縁側に集まって、自分が作った野菜を地域の人びとにおすそ分けしたり、ちょっとコーヒーをいれて振る舞ったりしていたそうです。そこから派生して、営業許可をとり、ちょっとしたカフェにして、料金をいただいてもいいのではないかという話がおこったりするのです。

このように、ただ空き家や空き店舗を新しく整備するだけでなく、その遊休不動産を「地域の住民とともに」利活用することで、地域を活性化させるのが「リノベーションまちづくり」です。

自分の得意なことを活かした、ちょっとした週末起業だったり、月に1回のイベントだったり、あくまでもハードルが低い状態で始められることがポイントです。何名かが協力したり、1社ではなく数社で取り組んだりすることも特徴でしょう。

ここで失敗することは、大きな痛手にはなりません。逆に成功すれば自信がつき、それを二束目のわらじとして生きていくこともできるかもしれません。副業にチャレンジできる、あるいは一線を退いたあとにも活躍できる場は、高齢社会にとっては非常に大切な場になるはずです。

もちろんこれは高齢者にかぎったことではないと思います。人工知能によって、多くの仕事が自動化され、仕事を失う人が一時的に増えていくのは避けられない未来です。そんな日がいつ来てもいいように、リスクを分散させて、多様な働き方、生き方をする準備をしておくことが必要になるのではないでしょうか。

※参考文献
・東京大学高齢社会総合研究機構, 『東大がつくった高齢社会の教科書』, Benesse, 2013年
・内閣府, 『平成28年版高齢社会白書』, 2016年
・総務省統計局, 『平成25年住宅・土地統計調査』, 2013年
・清水義次, 『リノベーションまちづくりとは』, 豊島区リノベーションまちづくり検討委員会資料, 2014年11月27日

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