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認知症が「急に」進んだように感じられた場合

認知症が「急に」進んだように感じられた場合

認知症について、ネガティブなイメージがありますか?

認知症という言葉が広く知られるようになりました。ニュースや新聞など、様々なメディアで、この言葉を見ない日はないくらいです。ただ、その実態についての理解は、まだまだ深まっているとは言えないように思います。ニュースも、興味をひきつけるために、大げさになる傾向があります。

しかし、認知症に対するネガティブなイメージや、間違った情報をそのまま知識としてしまうのは危険でしょう。とはいえ、なにごとも正しい理解というのは難しいものです。少しずつでもよいので、認知症についての偏見をなくし、理解を深めていきましょう。

ところで、認知症は、2025年には700万人を超えると言われています。誰にとっても、いつかは関係してくる話であり、当然、不安も大きいと思います。認知症についての理解を深めれば、こうした不安の一部は、きっと解消するはずです(全部ではありませんが)。

認知症とは、いったいなんだろうか?

ICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)によると、認知症は「一度正常に達した認知機能が、後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態。

通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能の障害からなる症候群」と定義されています(注:筆者が簡略化しています)。

人間は、その成長過程において、日常生活や社会生活を営む上で支障がない程度の、様々な知能を獲得します。その後、脳に「なんらかの疾患や障害を負う」ことで、そうした日常生活や社会生活を営む上で必要な知能を失ってしまうことがあります。

脳の機能が正常ではなくなることで、せっかく獲得した知能を活かして生活することができなくなる場合があるのです。認知症とは、こうして正常ではなくなった脳の機能が回復することなく、逆に、悪い方向に慢性的に進行していく状態を指しています。

よく「認知症は病気」という言葉を聞きますが、上記の定義で言うと、これは正確ではありません。認知症はあくまでも状態であり、その状態になる原因として、なんらかの疾患や障害(病気など)がある、ということなのです。

専門家によって見解は様々ですが、脳の機能が正常ではなくなってしまう原因は、数十種類から百数十種類もあると言われています。ただ、その中の大多数をアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)がしめているため、認知症=アルツハイマー病というイメージが定着しているのです。

酔っ払うことと、認知症の違いについて考えてみる

お酒を飲んで、酔っ払った経験を思い出してみてください。飲み会の途中までは記憶があったものの、気がついたら、ぐちゃぐちゃに散らかった家で寝ていたということもあるでしょう(ありませんか?)。

このときは、アルコールという原因により、脳の機能(記憶等)が一時的に正常ではない状態になっています。日常生活も乱れてしまっているため、仮に、これが継続すれば、認知症と診断される可能性もあります。脳の機能が正常ではなくなる原因は、本当に様々なのです。

ただ、記憶が飛ぶほどに酔っ払うことと認知症が違うのは、前者はこの状態がずっと続くものではないということです。二日酔いが覚めれば、またもとの日常生活を営めます。酔っ払って記憶が飛ぶ状態がずっと続くような状態が認知症だとすると、認知症に苦しむ人は、本当に大変な状態にあるということが想像できるでしょう。

アルツハイマー病と診断されたとしても・・・

とにかく、認知症のような状態になる原因は、多岐に渡ります。たとえ「アルツハイマー型認知症」と診断されていても、別の認知症の原因(疾患)によって、認知症の状態が進んだり強くなることもあります。

よく、介護者(家族)から「急に、認知症が進んだんです」「最近、認知症が進んで・・・」と言われることがあります。一般的に、アルツハイマー型認知症であれば、その進行は止まりませんが、急激に進むということはあまりありません。緩やかに進行していくのがアルツハイマー型認知症の特徴だからです。

そうすると、認知症が「急に」進んだ原因が、別にあるかもしれないということです。思いつくものだけでも(1)脳梗塞などの脳の血管に何らかの病気があった場合(2)ビタミンB12欠乏により栄養素が足りなくなっている場合(3)薬の変更などが有りその副作用の場合(4)脱水症状の場合(5)転倒などで頭を打って脳内に血の塊などが出来てしまっている場合、などなどです。

繰り返しになりますが、突然、脳の機能が正常でなくなる原因は様々です。ですから、認知症と診断されている高齢者の介護の中で「急に、認知症が進んだ」と感じられることがあれば、できるだけ早いうちに、介護職や医療職に相談してください。

もしかしたら、重篤な病気が隠れているかもしれませんし、症状がおさまることも十分にありえます。「急に、認知症が進んだ」という感じは、高齢者本人だけでなく、介護をする家族の生活を守るための重要なサインだと思ってください。

※参考文献
・日本神経学会, 『認知症疾患治療ガイドライン2010』
・(訳)中根 允文, et. al., 『ICD-10精神および行動の障害』, 医学書院, 2008年03月

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