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高齢者の糖尿病、その背景と食事療法について

高齢者の糖尿病、その背景と食事療法について

加齢と糖尿病について

加齢とともに、糖尿病の出現率は上がります(日本糖尿病学会, 2013年)。事実、日本国内で約950万人と言われる糖尿病患者のうち、半数以上は65歳以上となっています(日本臨床内科医会, 2016年)。糖尿病の出現率は40歳から急速に増えるので、これは、高齢者だけの問題ではありません。

糖尿病とは、血糖値が高い状態が続いてしまう病気です。日常的には症状らしいものが感じられないのですが、放置しておくと、腎臓、目、心臓、脳といった身体の様々なところに合併症(糖尿病を原因とした別の病気)として現れてきます。糖尿病は、命に関わる、深刻な病気なのです。

こうした合併症を発症させないためには、血糖値が高すぎる状態にならないようにする必要があります。その手段として知られているのは(1)食事療法(2)運動療法(3)薬物療法の3つです。こうした手段によって、血糖値を正常な範囲にコントロールするのが治療の基本となります(日本臨床内科医会, 2016年)。

ただ、高齢者の糖尿病の場合(1)長年身についている食習慣の変更への心理的な抵抗があり食事療法が進みにくい(2)要介護状態だったり、身体が弱っていて、運動療法が十分に進みにくい(3)他の病気のための薬との飲み合わせなどで副作用があったりして薬物療法がやりにくい、といった難しさがあります。

なぜ糖尿病になってしまうのか

実は、旧石器時代(200万年前〜1万年前)の人類には、糖尿病は稀な病気であったことが知られています。旧石器時代の人類は、食物連鎖の中間くらいの地位にあって、慢性的に飢えていました。このため人類は、食べられるときに一気に食べて、その栄養を溜め込むような身体になっているのです。

その後、人類は農耕や牧畜を進め、慢性的な飢えから解放されました。しかし、人類の遺伝子は、200万年も続いた旧石器時代に適応しており、飢えから解放された時代の食生活には、まだ対応できていないのです。このため、私たちの身体は、必要以上の栄養を体内に溜め込んでしまう傾向があります。

これが、現代の人類に糖尿病が多く発症してしまうことの根本原因と言われています。このため、糖尿病は「文明病」の一つに数えられています。ここから、食事の内容を、旧石器時代と同じものにしようというパレオ・ダイエット(旧石器食)という考え方も生まれています。

しかし、自治医科大学名誉教授であり、女子栄養大学副学長の香川靖雄先生によれば、パレオ・ダイエットは別の病気の原因ともなり、現代人には不適切なようです(香川, 2014年)。この背景には、旧石器時代以降の人類も、それなりに進化しているという事実があります。

パレオ・ダイエットの流れを組む糖質制限ダイエットも、専門家の助けなしに勝手に進めると、命の危険があります。やみくもにブームに流されることなく、正しい知識をもって、科学的な対応をすることが必要なのです。

糖尿病の食事療法におけるポイント

先天的な異常としての糖尿病(1型)ではない糖尿病(2型)の場合、厳格な食事療法を行えば、7割以上の人が、血糖値の適正なコントロールが可能になるそうです(日本栄養士会, 2007年)。以下、高齢者でも進めやすい食事療法のポイントについて、簡単にまとめておきます。とはいえ、糖尿病の治療には、個人差も大きくありますので、主治医の指示にしたがった対応が必要になることは、ここで強調しておきます。

糖尿病食事療法のための食品交換表を活用する

糖尿病であっても、バランスの取れた、適切な量の食事をとることは絶対に大事です。日本糖尿病学会は、昭和38年から特別な委員会を持ち、糖尿病でも美味しい食事を楽しめるように、糖尿病食品交換表を作成しています。これを参考にすれば、糖尿病に限らず、健康な食生活を実現することが可能になります。

よく噛んで、ゆっくり食べる

よく噛んで食べると(1)満腹感が得られやすくなり、食べ過ぎを避けられる(2)脳の血流が増え、脳が活性化される(3)食べ物本来の香りや味をゆっくり楽しむことでリラックス効果にもつながる、と言われています(日本栄養士会, 2007年)。また、食べる速さが早い人は肥満になりやすく、血糖値が上がりやすいことも知られています(大塚, 名古屋大学大学院医学系研究科)。

炭水化物は最後に食べる

糖尿病の場合、ご飯やパンといった炭水化物の食べ過ぎはダメです。炭水化物を食べる場合でも、野菜や肉、魚を食べてた後、最後に食べるとよいという研究結果が紹介されています(清野, 2015年)。食べる順番に関する研究報告は増えてきており、基本となる順番は、野菜→肉・魚→炭水化物というもののようです(今井, 全国発酵乳乳酸菌飲料協会)。また、水溶性食物繊維(ゴボウ、玉ねぎ、キノコ類、海藻類、納豆、オクラなど)の効果も報告されています(NHK, 2015年)。

アルコールとお菓子は控える

アルコールは高カロリーであり、かつ糖質を含むものが多いため、糖尿病になると、禁止されます。また、多量の飲酒により肝機能障害などになると、血糖値のコントロールが難しい糖尿病になってしまいます。ただ、肝機能障害やその他の合併症がない場合は、少量のアルコールであれば問題がないことも多いようです。当然ですが、糖分が含まれるお菓子は、糖尿病の敵です。糖分が多く含まれる清涼飲料水なども控える必要があります(畑, 2013年)。

※参考文献
・日本糖尿病学会, 『高齢者の糖尿病』, 科学的根拠に基づく糖尿病診察ガイドライン2013, 2013年
・日本臨床内科医会, 『高齢者の糖尿病』, 2016年7月
・香川 靖雄, 『「旧石器食」が体にいいという説は本当か』, 栄養と料理, 2014年6月号
・日本栄養士会, 『糖尿病栄養食事指導マニュアル』, 平成19年度政策事業, 2007年
・大塚 礼, et al., 『食べる速さに関する研究の主な結果』, 名古屋大学大学院, 医学系研究科
・清野 裕, 矢部 大介, 『米飯の前に魚料理や肉料理をとる「食べる順番」がインクレチンを介して食後の血糖上昇を改善:糖尿病の予防や治療に活かせる食事療法の新展開』, 関西電力医学研究所, 2015年12月24日
・今井 佐恵子, 『野菜から食べて生活習慣病予防』, 全国発酵乳乳酸菌飲料協会
・NHKためしてガッテン, 『食べて糖尿病大改善! 医師も驚がく最新ワザ』, 2015年06月10日
・畑 千栄子, 『間食・アルコールについて』, 糖尿病教室, 平成25年10月8日

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