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医療職と介護職が近くなる?資格取得の教育課程における共通課程が整備される見通し

医療職と介護職が近くなる?資格取得の教育課程における共通課程が整備される見通し

医療職と介護職の断絶について

一般人から見たときは、医療も介護もヘルスケアであり、同じ業界の人々のように見えるかもしれません。しかし、医療職は医師をヒエラルキーの頂点とする医療業界の人々として独立した存在です。また、介護職はケアマネージャーを中心としながらも、様々な業者がゆるく連携する介護業界の人々として独立した存在です。

医療業界の人々は、医学を前提とした科学的な知見から、病に苦しむ「患者」に対応しています。これに対して介護業界の人々は、科学ではまだわかっていないことまで含めて、自立に苦しむ「要介護者」に対応しています。

ここで「患者」と「要介護者」は、同じ1人の人間だったりします。ただ、医療業界と介護業界とでは、1人の人間を見るときの角度(アスペクト)が違うのです。本来であれば、医療と介護を利用する側にある1人の人間が「利用者」として、異なる専門性を適切に選んでいけばよいのです。

しかし、医療も介護も、かなり複雑で難解なものになってきています。そうなると「利用者」は、それを適切に選んでいくことが困難になるでしょう。そこで、自分はなにを選べばいいのかを誰かに聞く必要が出てきます。しかし、医療業界と介護業界とでは、同じ質問をしても異なる回答が出てくるという結果になりがちなのです。

究極的には、医療業界と介護業界は1つのヘルスケア業界として一体化していくべきなのでしょう。しかし、医療と介護の断絶はかなり大きなものであり、現時点の日本では、それは夢物語のようになってしまっています。

この断絶の解消に成功しているオランダのビュートゾルフを日本に導入しようとする動きもあります。しかし、この背景にはオランダ独特の文化があり、それを無視して、そのシステムだけを上手に日本に導入するのは、簡単なことではないでしょう。

厚生労働省の取り組み

そもそも厚生労働省は、医療も介護も、同時に管轄しています。ですから厚生労働省は、この医療と介護の断絶について、もっとも深く理解し、苦悩している団体でもあります。当然、この問題を放置しているわけではなく、なんとか解消させようという努力を続けてきました。

そうした努力のひとつとして、医療職と介護職の資格取得において必要となる教育課程の中に、共通課程を設定していくことを考えているようです。以下、CBnewsの記事(2017年2月10日)より、一部引用します。

既に国は、保健や医療、福祉の専門資格のうち、対人支援を主な業務とする資格について、複数の資格に共通した基礎課程と、資格ごとの専門課程とに再構成する方針を示している。導入が実現すれば、有資格者が別の資格を取得するための履修期間の短縮が見込めるという。

基礎課程の内容や対象となる資格については来年度から検討を開始するとしているが、看護師や介護福祉士、保育士、理学療法士などが対象となる見通しだ。

将来的には、医師やケアマネージャなどの教育課程にも、こうした共通課程が設定されていくことでしょう。それによって、医療業界と介護業界の共通言語が増え、それぞれの業界にまたがって資格をもち仕事をする人も増え、究極的には、医療と介護の分断が解消されていくはずです。

そのときになっても、誰が、ヘルスケア全体の頂点にいるべきかという議論は残ります。それは医師かもしれないし、そうでないかもしれません。もしかしたら、人工知能が、そこにいる可能性もあります。最後に、ここについて少しだけ考えてみます。

人工知能の世界は「検索」から「おすすめ」へと変化しつつある

Googleに代表される「検索」の技術によって、世界は大きく変わりました。しかし「検索」すればなんでもわかると考えられていた時代は終わっています。個人では処理しきれない量の情報が氾濫しており、ウソや間違いの情報も増えてしまっているからです。

今回の話では、医療と介護の断絶について考えました。しかし、1人の人間を「利用者」として定義した場合、選ばなければならないのは、医療や介護の専門性だけではありません。そして、勉強しようと思って「検索」しても、どの情報が正しくて、かつ自分にあっているのかを判断するのは困難です。

そこで、人工知能の世界は「検索」から「おすすめ」に動こうとしています。人工知能に、自分の価値観を理解してもらい、自分にあっているサービスに関する情報を、自分の代わりに探してきてもらうという発想です。それを「おすすめ」として、理由とともに提案してもらえたら、私たちはより快適に暮らしていくことができるでしょう。

そうなったとき、医療や介護はもちろん、様々な専門性は、それぞれに断絶していても構わないのかもしれません。人工知能の利用が進んでいる社会では、そうして断絶している様々なサービスをどのように組み合わせて利用すればいいのかを考えるのは人工知能の役割になっているのですから。

※参考文献
・CBnews, 『医療福祉の共通課程、21年度の導入目指す- 厚労省、来年度から検討開始へ』, 2017年2月10日

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