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介護を輸出する!国際・アジア健康構想協議会が発足!(ニュースを考える)

介護を輸出する!国際・アジア健康構想協議会が発足!(ニュースを考える)

本当に介護は成長産業なのか?

介護は、成長産業と言われます。しかし、介護事業者の倒産はとどまるところを知らず、過去最多を更新してしまっています。この事実は、どのように考えたらよいのでしょう。本当に成長産業であるなら、どうして介護は儲からないのでしょう。

ある産業を成長産業と定義するには、3つの条件が必要になると考えられます。結論から先にいうと、介護は、これら3つの条件をみたしています。このため、介護は成長産業であり、多くの企業が参入すべき新事業のターゲットであると結論づけられるのです。以下、その3つの条件について、簡単に述べてみます。

1つめは、その市場が大きいことです。十分なニーズがあり、かつ、そのニーズを満たすために使われるお金の総量が大きいことが必要です。世界が高齢化する中で、介護のニーズと、それに使われるお金は巨大であり、今後はさらに大きくなっていくことは疑えません。介護は、この点で1つめの条件をみたしています。

2つめは、その市場に非合理性や無駄が多いことです。仕事とはすなわち、課題の解決です。ですから、そうした課題が多ければこそ、新規事業として参入のチャンスがあります。介護に、非合理性や無駄といった課題が無数にあることは明白です。よって、介護は2つめの条件もみたしています。

3つめは、そうした課題の解決に、技術が使えるかどうかです。技術は積み上がるものであり、常に最新の技術が過去の技術を追い抜いていきます。このため、課題解決のための投資は1度では終わらず、なんども繰り返し発生することになります。介護の課題解決には技術も必要なので、3つめの条件もみたしています。

どうして介護事業者の倒産が止められないのか?

介護が成長産業であるなら、どうして、介護事業者の倒産が止まらないのでしょう。そこには、いかに成長産業であったとしても、技術による課題解決という方向性を持っていない限り、なかなか儲からないという経営の宿命的な背景があります。

技術開発というものは(1)10人必要だった仕事を2人でこなせるように効率化したり(2)過去には人間が行っていたことを代替したり(3)そもそも人間にはできないことを行ったりする、という方向性を持っています。

こうした技術開発に成功すると(1)効率化される分に応じて売上が上がる(2)置き換えられる人件費に応じて売上があがる(3)人間にはできないという価値に応じて売上があがる、という成果も生まれるでしょう。しかも技術はどんどん発展していきますから(競合に負けない限り)ここで生じる売上も高まっていくことが期待できます。

注意したいのは、技術というのは、必ずしも理科系出身の人材が、難しい数式を組み合わせて生み出すものばかりではないということです。業務のプロセスを改善して、同じ労力でもより大きな成果を出したりすることも技術です。現場の仕事をしていても、そこで学んだ現場の技術を、コンサルティングとして販売することも可能です。

介護事業者の倒産が止まらないのは、介護の課題に対して、技術ではないアプローチで解決しようとしているケースが多いからだと推測されます。ただ、介護保険からの収入を頼りにして人を集め、介護サービスを行っている場合、なかなか技術は積み上がらないでしょう。

課題解決のための技術が積み上がらない場合、人材1人あたりの売上は変化しません。現実には、社会福祉のための財源が枯渇しつつあり、介護サービスの単価は、介護保険法の改正のたびに下げられています。そうなると、技術の積み上げがなければ、売上は下がり続け、どこかの時点で倒産するしかなくなるのです。

介護の輸出が本格化しはじめる

介護は成長産業です。ただ、産業の成長から恩恵が受けられるのは、課題を、なんらかの技術で解決しようとする企業だけです。また、それが技術である限り、簡単に国境を超えていきます。過去、英語力の有無に関わらず、日本のメーカーが世界で活躍した背景には、確固たる技術力があったからです。

そしていよいよ、日本の介護(技術)の輸出が本格化しようとしています。まずは、国際・アジア健康構想協議会に注目です。この協議会だけでなく、今後は、こうした団体の設立が増えていくと予想されます。以下、日経新聞の記事(2017年2月9日)より、一部引用します。

官民で日本の介護サービスをアジアに輸出するために政府と100を超える企業や団体が連携する協議会が9日、発足した。三菱商事や介護大手のリエイ(千葉県浦安市)などが連携し、共同でアジアの介護需要を取り込む。

自民党の特命委員会(武見敬三委員長)や政府の健康・医療戦略室が中心となり「国際・アジア健康構想協議会」を立ち上げた。官民での介護サービスのアジア輸出の計画は昨年から政府・与党が主導して始まり、多くの企業や団体と連携し本格化する。介護ロボットの輸出なども含め、介護のパッケージ輸出を目指す。

この流れに乗るためにも、すべての介護事業者は、自分たちの強みを今一度ふりかえり、それを技術として整える必要があります。苦しい時代の介護に、先駆者として入った介護事業者が、この流れに乗れないとするなら、それはとても悲しいことです。

老舗と言われるような介護事業者こそ、がんばってもらいたいです。その現場での経験を世界の介護に活かしていくためには、経験を言語化し、経験のない介護職でも、より高いレベルの介護ができるようにしていく必要があります。

目の前の利用者(要介護者)と向き合うことは、当然、大切です。同時に、そこで学んだことを、介護に悩んでいる世界中の人々に届けるという視点も大事なのです。その視点から、新たな事業が創造されることを待っている人が多数いるのですから。

※参考文献
・日経新聞, 『介護のアジア輸出へ官民協議会発足』, 2017年2月9日
・ニュースイッチ, 『日本の介護をアジアに。国際・アジア健康構想協が始動』, 2017年2月11日

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