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プロの介護職は、暴力やハラスメントを受けている

プロの介護職は、暴力やハラスメントを受けている

プロの介護職ばかりが批判されるのはおかしい

プロの介護職が、高齢者を虐待したということは、よくニュースになります。もちろん、それはそれで、問題です。ただ、本当に介護の現場をみると、頻度という意味ではむしろ、プロの介護職のほうが、高齢者から暴力やハラスメントを受けているという事実に気がつきます。

人間は、高齢化すると、脳の老化によって、感情のコントロールが効きにくくなります。老化によって、前頭葉の委縮が起こることが原因とされているようです。また、心のバランスを調整する物質であるセトロニンが現象することも、この原因と考えられています。

そうした高齢者と日常的に接しているプロの介護職は、高齢者からネガティブな感情をぶつけられることが多くなります。たまにしか会わない家族からすれば「まさか、うちの親が」と感じるのも当然かもしれません。しかし、若い頃はおさえられてきた感情がおさえきれなくなるというのは、高齢者一般に見られることなのです。

プロの介護職が高齢者を虐待してしまう背景にも、先に手を出したのは高齢者のほうというケースも散見されます。繰り返しますが、だからといって虐待が許されるわけではありません。しかし、介護の現場には、虐待してしまうような状況があるというところからはじめないと、トカゲの尻尾切りから抜け出ることはできません。

問題の根本には、そもそも、人間の高齢化にともなう、感情コントロールの喪失があるのです。ここを無視して、プロの介護職ばかりが社会的に批判されるのはおかしいことではないでしょうか。社会として、高齢者の感情コントロール問題を認識し、その対策を進めないとならないでしょう。

兵庫県の取り組みを評価したいが・・・

こうした中、兵庫県が、全国とは異なる取り組みを開始するようです。まずは、兵庫県がこの問題を正しく認識し、対策に乗り出したということは評価しないとなりません。ただ、その中身は、持続可能なものなのかどうか、少し不安になります。以下、神戸新聞NEXTの記事(2017年2月3日)より、一部引用します。

高齢者らの自宅を訪れる訪問介護・看護職員が、サービス利用者やその家族から「暴力」を振るわれるケースが起きているのを受け、兵庫県は2017年度、対策に乗り出すことを決めた。現状では利用者や家族の同意がないと、複数の職員で訪れても1人分の報酬しか出ず、単独介護が難しい利用者などを除いて1人での訪問が多い。このため危害が想定される場合に、2人目の人件費の一部を県が補助する。

訪問介護・看護職員への暴力は、1人で利用者宅を訪れるため被害が明らかになりにくいという。神戸市看護大のグループが15年度、県内の訪問看護師に行った調査では、回答した358人の半数が、身体的な暴行や言葉での侮辱、威圧的な態度などの「暴力」を受けたと答えた。抱きつかれるなどのセクハラ被害もあった。

そもそも社会福祉の財源が枯渇しつつある日本において、本来は1人で対応すべきところに、2人の人材を配置するということが、持続可能なのでしょうか。これは「危害が想定される場合」に限られるのですが、そうしたケースが想像以上に多い場合、財政はすぐに破綻してしまいます。

なんとか、よりお金のかからない、他の対策を探していく必要がありそうです。しかし、妙案があるのであれば、兵庫県もこうした対策に乗り出していないはずです。兵庫県としても、これは苦渋の決断だったと想像されます。

根本的な対策は、アンチエイジングしかない

高齢者からしても、暴力やハラスメントをしたくてしているわけではないことがほとんどでしょう。しかし、老化によって、感情のコントロールが効かない場合、自分の中にいる猛獣を止められなくなります。ですから、根本的な対策となるのは、このような老化を遅らせることしかありません。

医学には、大きな期待がかかっているものの、ただ医学の発展を待つことはできません。そうなると、規則正しい生活、社会活動からの刺激、バランスのとれた食事、適度な運動といった、アンチエイジングの、あたりまえの健康管理が大事になってきます。

しかし、こうしたことがわかっていても、それを実行にうつせないのが人間という存在でもあります。そして、こうした人間の弱さを補完するためにこそ、テクノロジーがあるわけです。特にIT分野からは、健康管理をサポートするツールが続々と出てきています。

兵庫県の取り組みは、一定の評価ができるものではあります。ただ、これが保守本流の対策ではないことは、兵庫県もわかっているはずです。そして、保守本流の対策とは、テクノロジーへの投資なのです。

他の都道府県も、まずは、兵庫県の取り組みにならう必要があるでしょう。しかし、それは短期的な対応であって、長期的には、ヘルスケア分野に対する官民の投資が増えていくことが大切です。国も、ヘルスケア分野への投資額をモニタリングし、産業の発展を促進させていかないとならないはずです。

※参考文献
・神戸新聞NEXT, 『訪問介護職員への暴力防げ 複数人派遣費を補助へ』, 2017年2月3日
・JCASTヘルスケア, 『感情をコントロールできない高齢者 暴言に暴力、原因は脳の老化にあり』, 2015年12月12日

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