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愉快に暮らすことこそ、最高の復讐である(living well is the best revenge)

愉快に暮らすことこそ、最高の復讐である(living well is the best revenge)

愉快に暮らすことこそ、最高の復讐である(living well is the best revenge)

イギリスの詩人、ジョージ・ハーバート(George Herbert/1593〜1633年)によって集められた名言を並べた本(死後となる1651年に出版)があります。この本の中に、タイトルとした「愉快に暮らすことこそ、最高の復讐である(living well is the best revenge)」という言葉が出てきます。

誰もが、悔しい思いをして生きています。思い出したくない、恥ずかしい体験も多数あるでしょう。そもそも、悔しくて恥ずかしいのが、人生の定義とも言えるかもしれません。そうした中で、危ないのは、過去の悔しさや恥ずかしさにとらわれてしまって、未来に生きることができなくなることでしょう。

自分のことを辱めた人、笑った人、いじめた人のことを、いつまでも恨むことは、健全ではありません。もちろん、そうした人のことを擁護しているのではありません。そうではなくて、そうした人のことで脳内をいっぱいにしているほど、人生は長くないということを伝えたいのです。

それを的確に表現しているのが「愉快に暮らすことこそ、最高の復讐である(living well is the best revenge)」という、今から300年以上も前の名言なのです。これは、後ろを向かないで、未来の自分自身の人生がより愉快なものになるように、その方向に向かって努力することが大事という意味でしょう。

復讐してやりたいという感情を消すことはできるか?

そもそも、復讐というネガティブな感情を持つこと自体がおかしいという意見もあります。こうした意見は、人間は強くあれるという前提に立っているものです。しかし逆に、人間は弱い存在であるということを前提とすれば、別の意見になります。

法学という立場では、復讐したいという感情は、人間が生まれながらにして持っていると考えられています(杉山, 1965)。その復讐を、無制限に個人に委ねてしまうと、社会が混乱します。そこで、復讐をする権利を個人から取り上げ、国がそれを刑罰として肩代わりしたという法学の解釈があることは、知っておくべきでしょう。

世界中の神話にも、もれなく復讐の物語があります。それは、なにも復讐を容認するものではありません。むしろ、人間の弱さを警告するものであり、古代の世界における自己啓発的な意味があることは、容易に想像できます。神話の中では、それだけ、人間は復讐の感情にとらわれてしまうという歴史的な事実が直視されているのです。

もちろん、世界には、復讐してやりたいという気持ちを消せる聖人もいるのかもしれません。しかし、大多数の人は、自分の中に沸き起こる復讐の暗い感情の火に苦しむものではないでしょうか。とはいえ、現代社会においては、直接的な復讐は(ほとんど)できません。であれば、この苦しみからの解放についてのノウハウが必要なはずなのです。

愉快な人生に向かうことが、最大の復讐になるのはどうしてか

人生というスケールではもちろん、介護の現場においても、嫌なことは無数にあります。ふと気づくと、そうした嫌な経験を、脳内で繰り返し再生していたりもします。そんなことをしていてはいけない、前を向かなくちゃと思っていても、夢の中で、その経験が再生されることまでは避けられません。

では、どうして愉快な人生に向かうことが、最大の復讐になるのでしょう。それは、復讐したくなるような相手の狙いをくじくことになるからです。復讐したくなるような相手とは、例外なく、私たちの存在を根本から否定した人でしょう。

復讐したくなるような相手は、私たちと、人生のパートナーだったり、仲間だったり、友達だったり、雇用関係だったり、ポジティブな関係性を結ぶことを拒否した人々です。そうした人々は、私たちを選ばないという選択をしたわけです。その選択が間違いであったことを、相手に知らしめることが、最大の復讐になるのです。

そのためには、私たちは、まず自分が幸福にならないといけません。そして、私たちのことを選んでくれた人々のことも、幸福にしないとなりません。言うまでもなく、幸福に生きることは簡単なことではありません。そのための努力も、楽なものではないでしょう。

だからこそ、復讐してやりたいという相手がいることを、むしろバネとすることに意味があるのです。くじけそうなとき「ここでくじけたら、あいつの思う壺だ」と考え、前に向かっていくことが、効率的なのです。実際には、そうして幸福を手にいれたとき、私たちは、自分の中から復讐したいという気持ちが消えていることに気がつきます。

逆説的なのですが、復讐の感情から自由になるためには、復讐の感情に注目し、それを利用することが必要なのです。「愉快に暮らすことこそ、最高の復讐である(living well is the best revenge)」という言葉は、こうした、自由への渇望を基礎としています。それは、貴重な先人の知恵として、300年以上もの時間を超えて伝わるものだということを、いま一度、強調しておきます。

※参考文献
・WikiQuote, “George Herbert”, https://en.wikiquote.org/wiki/George_Herbert
・杉山 晴康, 『刑罰の始源としての復讐について』, 早稲田法学 40(1), 101-119, 1965-01

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