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介護福祉士の受験者数が、前年度比で半減へ(ニュースを考える)

介護福祉士の受験者数が、前年度比で半減へ(ニュースを考える)

介護福祉士は、介護現場のエキスパート

介護業界は、慢性的な人手不足にあり、人材の補充が急務です。しかし、ただやみくもに人材を増やすのではなく、同時に、人材の能力開発を進めなければなりません。その目安のひとつが、介護福祉士の資格保有者の人数です。

介護福祉士は、こうした、介護職の能力開発を目的とした国家資格です(1987年設立)。国家資格が設立されて以降、介護福祉士の教育が整備され、介護福祉士の登録者数は110万人(2014年)を超えるまでになりました。

しかし、その背後では、問題も発生してきています。介護福祉士を養成する養成学校への入学を希望する人が年々減っているのです。昨年は、定員に対する入学者数の割合が、ついに5割という水準にまで来てしまったのです。

介護福祉士の資格試験への出願者が激減

そんな厳しい状況にあるにも関わらず、介護福祉士の資格試験への出願者が、前年比で半減というニュースが入ってきました。養成学校の定員割れも深刻な上に、資格試験の魅力も減っているという危機的な状態です。以下、毎日新聞の記事(2017年1月27日)より、一部引用します(改行位置のみ KAIGO LAB にて修正)。

29日に実施する介護福祉士の国家試験の受験申込者数が前年度の半分の約8万人に激減していることがわかった。今年度から受験資格として実務者研修が義務付けられたのが要因とみられる。

介護福祉士は国家資格で、介護職の中核的な役割を担うことが期待されている。社会福祉振興・試験センターによると昨年度は16万919人だったが、今年度は7万9113人。合格率は例年6割前後。

昨年度までは「3年以上の介護職としての実務経験」があればよかった。しかし、厚生労働省は「介護職の資質向上」を打ち出し、実務者研修を導入。たん吸引など医療的なケアも含めた研修の受講が義務付けられた。

研修時間は、ヘルパー2級の資格がある人は320時間だが、無資格の場合は450時間。受講料も必要で、勤務先の施設などが出してくれなければ自己負担になる。一方で、資格を取得しても賃金アップは月5000~1万円程度のケースが多いとされている。

日本の社会福祉における介護の持つ意味が大きくなり、介護福祉士にも、より大きな期待が寄せられているのは明らかです。そうした背景から、厚生労働省が「介護職の資質向上」を掲げ、より充実した研修を導入したことは、むしろ評価できる部分です。

ただ、その研修の設計がおかしいことが要因で、受験者数が激減してしまったのです。そもそも、仕事をしながら、450時間もの研修を受けるのは困難です。この設計をした人は、450時間という研修を、実際に自分でも受けてみたのでしょうか。

それに、ただでさえ待遇の悪さが問題になっている介護職の人々が、この研修の費用(10〜15万円程度)を負担するのも難しいでしょう。そうして資格を取得しても、たいして給与はあがらないとなれば、受験者数が減っても仕方がありません。

では、どうして行くべきなのか

介護福祉士という国家資格の重要性が増していくのは、間違いないでしょう。その資格取得のハードルを高め、介護福祉士の資質を向上することも大事です。ただ、その負担を、やりがい搾取的な安い賃金で、感情労働をさせられている介護職に押し付けるのは筋違いです。

そこで、この450時間という研修の一部は、義務教育として、中学生のころに学ぶということを提案したいです。介護福祉士に求められる資質としては、厚生労働省が、11項目を定めています。この11項目を、以下に示します。

1. 他者に共感でき相手の立場に立って考えられる姿勢を身につける。
2. あらゆる介護場面に共通する基礎的な介護の知識・技術を習得する。
3. 介護実践の根拠を理解する。
4. 介護を必要とする人の潜在能力を引き出し、活用・発揮させることの意義について理解する。
5. 利用者本位のサービスを提供するために、多職種協働によるチームアプローチの必要性を理解できる。
6. 介護に関する社会保障の制度、施策について基本的理解ができる。
7. 他の職種の役割を理解し、チームに参画する能力を養う。
8. 利用者ができるだけなじみのある環境で日常的な生活が送れるよう、利用者ひとりひとりの生活している状況を把握し、自立支援に資するサービスを総合的、計画的に提供できる能力を身につける。
9. 円滑なコミュニケーションの取り方の基本を身につける。
10. 的確な記録・記述の方法を身につける。
11. 人権擁護の視点、職業倫理を身につける。

誰もが、人生のどこかで、介護に関わることになります。ですから、義務教育で、その基本となることについて学んでおくことは、よいことでしょう。また、この11項目で示されている資質は、将来、介護職にならなくても、役にたつ内容だと思います。特に、11項目の中でも 1、6、9、10、11 は、誰にとっても必要なものです。

中学生のうちに、450時間の一部でも消化しておけば、優れた介護福祉士になるための前提は確保できます。さらに、高校や大学の教育にも取り入れたら、介護福祉士として活躍できる素地をもった若者を増やすことができるでしょう。

逆に、11項目の中でも、先にあげた 1、6、9、10、11 については、過去の教育で学んでいる可能性もあります。たとえば大卒人材の場合、こうした部分については受講を免除することで、研修に必要な時間と費用を抑制できるはずです。

※参考文献
・厚生労働省, 『介護人材の確保について』, 福祉人材確保専門委員会, 2014年10月27日
・NHK NEWS WEB, 『介護福祉士育成の学校 27年度入学者は定員の半分』, 2016年3月29日
・毎日新聞, 『介護福祉士 出願者半減 「受験資格に研修義務」が要因』, 2017年1月27日

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