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カサンドラ症候群(介護の視点から)

カサンドラ症候群(介護の視点から)

カサンドラ症候群とは?

カサンドラ症候群(Cassandra Affective Disorder)とは、アスペルガー症候群の配偶者(パートナー)を持っている人が、その心身になんらかの病的な苦痛を受けてしまうというものです。男女を限った話ではありませんが、主に、アスペルガー症候群の夫を持つ妻に見られるとされるようです。

アスペルガー症候群は、発達障害(自閉症スペクトラム障害)の一つとされ(1)場の空気が読めない(2)相手の立場を想像できない(3)特定のルールに異常なこだわりをみせる、といった特徴が指摘されています。障害とはいえ、天才的な能力を発揮する人がアスペルガー症候群であるというケースもあります。度合いにもよりますが、社会的には問題とならないレベルのアスペルガー症候群も多いとされています。

しかし、配偶者(パートナー)がアスペルガー症候群の場合、夫婦として思いやりのある会話が成立せず、辛い思いをすることがあります。なにかを相談しても、その意図を理解してもらえないということも多いようです。これが結果としてアスペルガー症候群の二次障害となり、うつ、無気力や頭痛など、様々な問題に発展する可能性が指摘されているのです。

カサンドラ(Cassandra)とは、ギリシア神話に登場する王女の名前です。芸術の神アポロンに愛され、アポロンから予知能力を授かります。しかし、その予知能力によって、カサンドラはアポロンに捨てられる未来を知ってしまうのです。それでカサンドラは、アポロンの元を離れるのですが、アポロンはこれに怒り、カサンドラに不信の呪いをかけるのです。不信の呪いをかけられたカサンドラの話は、誰も信じてくれません。

アスペルガー症候群の夫をもつ妻もまた、その辛さを周囲に訴えても理解してもらえません。まるで、カサンドラと同じ不信の呪いをかけられているような環境に置かれます。ここから、カサンドラ症候群という言葉が生まれているのです。(まだ)正式な病名ではないので、そこには注意も必要です。

介護者(家族)と要介護者の間にも似た状況がある

高齢者になると、その性格が強調され、大きく5つのカテゴリに分類できるようになるという考え方があります(ライチャードの5分類)。この5つの分類のうち、3つ(装甲型、自責型、攻撃憤慨型)は、カサンドラ症候群を引き起こす可能性があるのではないかと考えられるのです。これは、自己防衛のために頑固になった高齢者には、アスペルガー症候群に似た特徴が現れるのではないかという仮説です。

そもそもカサンドラ症候群とは、相手にする人との意思の疎通がうまくいかない辛さを、誰にも理解してもらえない状態から生じると考えられているわけです。その相手がアスペルガー症候群であるかどうかが重要なのではなく、自分だけが辛い思いをしており、誰にも相談できないという環境に問題があるのです。

これは、介護をしている家族からすれば、思い当たるところの多い話ではないでしょうか。そこに、カサンドラ症候群という名称が与えられるかどうかはわかりません。しかし「一人で抱えこまないで!」という残酷な言葉をかけられるばかりの介護家族が、心身に病的な苦痛を受けるというのは事実だと思います。

近年になって、やっと、介護をする家族のケアに注目が集まってきています。それでもなお、実際に救いの手が差し伸べられている家族が多いとは言い難い状況です。ここには(おそらく)カサンドラ症候群のようなものが生まれてしまっています。単なるカウンセリングではなく、一歩進んだ医学からのアプローチ(臨床試験をベースとした科学)が必要だと思うのです。

介護をしていて「うつ病かな?」と思ったら

介護をしていて「うつ病かな?」と思ったら、もちろん、医師の診断を受けるべきでしょう。このとき、自分が介護をしていて、周囲の理解が得られていないとするなら、その事実も医師に伝えるようにしてください。それが、うつ病の原因になっている可能性もあるからです。

同時に、カサンドラ症候群への対応としては、同じ悩みを抱えている人が集う「自助グループ(self help group)」の活用が重要とされます。これは、介護をする家族が集う「家族会」と全く同じ考え方です。臨床試験と言えるレベルでの効果が認められているかは不明ですが、それでも、カサンドラ症候群と介護家族に効果があるとされる「治療法」が同じであるというのは示唆的です。

こうした「自助グループ」では(1)気持ちのわかちあい(2)情報のわかちあい(3)考え方のわかちあい、が起こります。ここでは、医師と患者の間に見られるような支援・被支援の関係はなく、対等な関係の構築が大事になります。とはいえ「自助グループ」を効果的に運用するために専門家が関わるという考え方(セルフヘルプ・クリアリングハウス/Self-Help Clearinghouse)もあり、その形は多様です。

※参考文献
・落合 みどり, 東條 吉邦, 『高機能自閉症・アスペルガー症候群への理解を広げるために』, 国立特殊教育総合研究所分室一般研究報告書, 平成16年3月
・産経新聞, 『夫と意思疎通ができずに妻が陥る「カサンドラ症候群」 発達障害の夫に悩み、鬱にも』, 2015年8月25日
・新潟大学/有川宏幸研究室, 『大人になった方たちへの支援』, 発達障害児者の早期の気づきと支援のための研修会資料, 2016年12月
・LITARICO発達ナビ, 『カサンドラ症候群とは?アスペルガー症候群の家族がいる人が注意したい症状・対処法まとめ』, 2016年7月13日

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