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介護派遣に未経験者を活用すると、時給が下がる原因になる?(ニュースを考える)

介護派遣に未経験者を活用すると、時給が下がる原因になる?(ニュースを考える)

人材派遣業者が介護人材の育成を始めている

日本の介護を取り巻く状況は、年々厳しさを増しています。特に、介護業界の人材不足と待遇の悪さは非常に大きな問題です。日本経済新聞の記事によると、この状況を打開するために、人材派遣会社も様々な取り組みを行っています。以下、日本経済新聞の記事(2016年11月19日)より、一部引用します。

派遣会社が介護分野で未経験者の確保や育成を進めている。介護施設の新設が相次ぎ有資格者の新規採用は一段と難しくなっている。未経験者の資格取得を後押しし、介護人材の層を厚くする狙いがある。介護分野での未経験者の活用は派遣時給を押し下げる要因にもなっている。

ニッソーネット(大阪市)は未経験者に介護職員実務者研修の受講を促している。以前の制度でホームヘルパー1級に相当する資格で、2級相当の初任者研修より上位にあたる。約13万円の講座を無償で提供し、受講者は2年で5割増えた。

同社の登録者の4割以上が未経験者。実務者研修の取得で、初任者研修が中心の他社と差別化する。実務者研修は2017年から上位の介護福祉士の受験資格となるため、長期のキャリア形成を促す効果も狙う。(以下省略)

記事にもあるように、派遣会社は、介護職の人材不足に対応するため、未経験者の資格取得を後押ししています。約13万円もする講座を無償で提供するというのは、非常に素晴らしい取り組みでしょう。それだけのお金を払ってでも、人材を確保することが求められているということでもあります。

また派遣会社としては、無資格者や未経験者が介護の現場に出ていくことで、業界全体の平均賃金が下がってしまうことを懸念しています。記事によれば、今年10月の介護業界の平均時給は1,378円でした。これは前年同月比で4.1%ダウンしています。

さらに介護職の平均時給は、全職種平均よりも14.6%も低いのです。平均賃金が低いという結果が出てしまうと、介護業界を志望する人材が減ってしまうという悪循環も起きてしまいます。いかに有資格者を増やして、賃金水準を高くしていくかが今後のカギにもなります。

介護職員実務者研修とは?

介護職には今まで、訪問介護員養成研修や介護職員基礎研修など、複数の資格認定の研修が混在していました(いわゆるホームヘルパー1級~3級などの資格)。しかしそれでは、介護業界として、いつ、どの資格を取得すべきかがわかりにくなってしまいます。

そこで現在では、かつてのホームヘルパー2級は介護職員初任者研修(初任者研修)に、ホームヘルパー1級と介護職員基礎研修は介護職員実務者研修(実務者研修)にそれぞれ改編されています。また、厚生労働省も、介護職のキャリアパスを明確にしてきました。

現時点での、厚生労働省が想定する介護職のキャリアパスとしては、まず、初任者研修を入り口とすることを固めています。その上で、実務者研修、そして介護福祉士、認定介護福祉士あるいはケアマネージャーという流れを組み、この広報活動を続けています。

初任者研修(130時間)をとばして、いきなり実務者研修(450時間)に入ることもできます。ただ、この場合でも、初任者研修の修了者とは、研修の受講時間に差をつけることで、あくまでも、初任者研修が入り口であることを強調しています。

たとえば、実務者研修の修了者の場合、実務経験が3年以上あれば、介護福祉士の国家試験にのぞむことができます。しかし、初任者研修の修了者の場合は、実務経験3年以上に加えて、実務者研修320時間を受けないと、国家試験を受けることができません。

この制度は平成28年度の介護福祉士国家試験(2017年1月)から適用されます。人材派遣会社は、この実務者研修の受講を促し、将来的に介護福祉士を目指すことができる人材を育成しようとしているのです。

介護福祉士への社会的な期待は大きい

以前にも記事にした通り、介護福祉士の到達目標は、介護職に限らず、全ての人にとって必要なものになっています。その前段階として受講する初任者研修の内容は、介護職の基本を学ぶのに加え、老化について理解したり、障害や認知症について理解するものになっています。

この内容が義務教育課程の中に入っていれば、少しでも早く介護福祉士の資格にトライすることができるようになります。生きる力をはぐぐむとされている総合的な学習の時間や、保健体育に充てられている時間に、介護に関する内容を持ち込んでも良いのかもしれません。

たとえば中学校の学習指導要領によれば、保健体育に充てられている時間は、年間で105時間、3年間で315時間にも上ります。その中で保健分野には3年間で48時間を使うことが必要とされています。総合的な学習の時間も3年間で190時間程度確保されています。

道徳や特別活動といった時間も、それぞれ3年間で105時間ずつ確保されています。もちろん現場の先生方からすれば、子供たちの育成にあたって非常に重要な時間であり、何にも代えがたい時間であるかもしれません。しかし本来、学習指導要領はこれから子供たちが生きていく中で、必要となる力をはぐくむために設計されているはずです。

学習指導要領は約10年に一度改訂されます。これまでも、時代に合わせて新しい内容が組み込まれてきました。であるならば、今後の社会において、ほぼ確実に必要になる介護に関して、義務教育として学んでおくこと自体が「生きる力」をはぐくむことになるのではないでしょうか。

※参考文献
・日本経済新聞, 『介護派遣に未経験者活用 時給の下げ要因に 各社、人材確保難しく』, 平成28年11月19日
・日本ホームヘルパー協会, 『訪問介護員の養成(介護職員初任者研修)と現任者のスキルアップ(実務者研修)について』
・中央教育審議会答申, 『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について』, 平成20年1月17日

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