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医師のいない地域が増えていく。人工知能は間に合うか?

医師のいない地域が増えていく。人工知能は間に合うか?

医師は足りないが、増やさないという国の方針に関して

医師は、その3割が過労死レベルと言われるほどの過重労働を強いられています。本来のあるべき医療が行えず、不満を通り越して絶望している医師も多数います。医師を増やさないと、医療の崩壊が起こるという指摘も、かなり以前からあります。

では、どうして医師は増えていかないのでしょう。理由は簡単で、国にお金がないからです。このまま高齢化が進めば、日本の医療費は、さらに増えていくのは確実です。それを支える財源がないのです。

そこで国は、こうした医療費の上昇を抑制するために、医師を増やさないという方針をとっているようなのです。あくまでも噂レベルの話ですが、まいじつの記事(2016年10月15日)より、医療ジャーナリストのコメントを引用します。

厚労省は、医療保険が破綻するシナリオを回避するために、医者と病院を減らそうと必死です。現在、病院の身売りや倒産が全国的に相次いでいますが、国は抜本的な手を、わざと打っていません。その結果、日本の医師数は世界の主要国のなかで最低のレベルです。医者がいなければ治療はできません。治療できなければ、医療費が膨らむこともない。だから、医療費を抑えるためには医師の数を減らし、病院の数も抑えるのが一番手っ取り早いというわけです

報酬を減らしてもいいから、医師を増やして欲しいという願い

医師の中には、自分の報酬を減らしてもいいから、医師を増やして欲しいという意見を持った人もたくさんいます。それほどまでに切迫しているのに、国が医師と病院を減らそうとしているのであれば、なんとも悲しい話です。

長時間労働を厳しく取り締まる時代にあって、医師については逆に、長時間労働が強いられているわけです。この状況が許されてよいはずもありません。なんとかしないとならないのですが、医師は高度な知識と経験が求められる職種であり、その育成には時間がかかります。

仮に、今から医学部の定員を増やしたとしましょう。そこから、実際に現場で活躍できる医師が生まれてくるまでは、平気で10年以上(医学部6年+研修医2年+臨床経験)の時間がかかります。これでは、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になる2025年に間に合いません。

人工知能は間に合うのか?

人工知能は、クリエイティブで、人間の気持ちを考える必要のある仕事は苦手と言われます。しかし、こうした、人工知能にとって、なにが苦手で、なにが得意かといった議論は、無駄な先入観を生み出すばかりで、あまり意味がないことです。

実際に、過去には、人工知能には不可能とされたことが、次々と実現されてきています。今後も、人工知能の発展は、私たち人間を驚かせていくことでしょう。そうした人工知能の発展事例の中でも、近年、特に注目されているのが、人工知能による病気の診断です。

この方向での人工知能の発展が間に合えば、日本における医療にも大きな変化があるでしょう。今は忙しすぎる医師も、診断については人工知能に任せ、治療や研究のほうに集中できるようになります。以下、ヨミドクターの記事(2016年8月6日)より、一部引用をします。

東京大学医科学研究所が導入した人工知能(AI)が、白血病患者の特殊なタイプの遺伝子を10分で見つけ、治療に役立てていたことが分かった。人工知能が患者の治療に貢献した国内初のケースで、がんなど医療分野での応用につながると期待される。

同研究所は昨年7月、米IBM社の人工知能「ワトソン」に、2000万件以上の生命科学の論文、1500万件以上の薬剤関連の情報を学習させ、がん患者の発病に関わる遺伝子や治療薬の候補を提示させる臨床研究を始めた。

「急性骨髄性白血病」の患者で、標準的な抗がん剤治療が合わないとみられた60歳代の女性の遺伝子情報を入力したところ、わずか10分で分析結果が示され、「二次性白血病」という特殊なタイプであることが分かった。医師の判断で女性は治療薬を変更し、数か月で回復、退院した。

人工知能の実用化を妨げるもの

今の時点でも、これだけの能力を発揮している人工知能です。しかしこれが、医療の現場で使えるようになるには、まだ相当な時間がかかると思われます。特にそれが、医療といった、一つのミスが、人間の命に直結してしまうような仕事では、なおさらです。

技術的には可能でも、現実の世界にそれが適用されるのは難しいといったものは多数あります。

たとえば、空飛ぶ自動車は、試作機を作っているメーカーも多くあり、実用化に耐える性能も出ています。しかし、交通ルールの整備や、法律の制定などは、まったく進んでいないと言ってよい状況です。自動車が空を飛ぶのは、まだかなり先のことになるでしょう。

これと同じようなことが、医療における人工知能の適用でも起こる可能性が高いと思われます。つまり、実用的には問題ないどころか、医師の(一部の)能力を超えるような能力をもった人工知能は、そう遠くない将来、実現されます。

しかし、人工知能を医療の現場に適用するとなると、ミスが起こった場合の責任問題からして、その調整は困難を極めると思われます。また、人工知能の登場によって仕事を奪われる医師も出てくるでしょうから、そうしたところからの反発も予想されるのです。

それでもなお、いまのままの状態で、医師が増えていかないとするならば、いずれは人工知能が現場にやってくるでしょう。それはきっと、ダムに開けられる小さな穴のようにしてはじまるのです。

※参考文献
・まいじつ, 『医者と病院の不足が極まる「2030年問題」』, 2016年10月15日
・朝日新聞, 『人工知能ワトソン、がん診断支援 8割で有用な情報提供』, 2016年9月18日

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