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要介護度を改善する介護事業者の報酬を優遇。インセンティブ設計の見直しに関して(ニュースを考える)

要介護度を下げた介護事業者の報酬を優遇

要介護度を下げると、介護事業者は損をしていた

要介護度が高いということは、それだけ、日常生活に介護支援が必要になるということです。そのため、介護保険の利用限度額が上がり、利用できる介護サービスも増えます。介護事業者の視点からすると、これは、売上の増加ということです。しかし、国からすれば、これは介護にかかる費用の増加ということになります。

要介護者にとっても、その家族にとっても、国にとっても、リハビリなどを通して、要介護度が下がることは、ハッピーなことです。しかし、この結果として介護事業者の売上は減り、最悪の場合は倒産してしまうということが起こってきました。そもそも、介護保険制度に設計エラーがあったということです。

この設計エラーに対して、国はやっと重い腰を上げ、その改善を検討しはじめています。安倍総理大臣が議長を務める「未来投資会議」が、その方向性を示しました。以下、NHK NEWS WEBの記事(2016年11月8日)より、一部引用します。

政府の未来投資会議は、社会保障費の抑制を目的に、介護保険で提供できるサービスに「自立支援介護」という枠組みを新たに設けて、高齢者の要介護度を下げた事業者の介護報酬を優遇する制度の導入を検討するよう求める提言案をまとめました。(中略)

来年夏ごろをめどに「自立支援介護」の具体的な内容を取りまとめるとともに、平成30年度の介護報酬の改定に合わせて、要介護度を下げた事業者の介護報酬を優遇する一方、自立支援を提供しない事業者への介護報酬を減らす制度の導入を検討するよう求めています。

そもそも介護とはなんなのか?

介護とは、対象となる、心身になんらかの困難を抱える人の自立を助けるものです。自立とは、本来は「他者の援助を受けないで、自分の力で身を立てること」の意味で用いられてきた言葉です。

しかし、特に社会福祉の領域においては、ノーマライゼーションをその理論的な背景としつつ、自立を「自分の生きかたについて自分で決断し、主体的な生活を営むこと」といった意味で用いています。

自立を、より現場に即した意味で解釈するなら「心身になんらかの障害を持っていたとしても、能力を引き出し、社会活動に参加すること」という意味になります。ですから、介護とは、その対象となる要介護者の能力を引き出し、なんらかの社会活動に参加してもらうための活動なのです。

介護とは、ただ、手すりをつけたり、車椅子を手配することではないのです。心身に抱えてしまった困難を改善し、機器の工夫などをすることで、自分で出来なかったことが出来るようになっていくプロセス(要介護度がそれ以上悪化しないように維持し、できれば下げる活動)として認識すると、介護本来の意味が理解しやすいと思います。

あるべきインセンティブ設計のかたち

望ましい行動を引き出すための仕組みを、特に、インセンティブと呼びます。介護のインセンティブとは、介護に関わるすべての人が、要介護者の能力を引き出して、社会活動に参加させる方向に作られていないとなりません。

しかし、先にもみたとおり、これまでの介護保険制度は、介護事業者のインセンティブ設計に失敗していたのです。それが問題視され、国のトップである内閣総理大臣を議長とする会議において、改善の方向性が示されたというのが、このニュースの大事な部分になります。

同時に、自立のための介護サービスを提供しない介護事業者に対しては、売上(介護報酬)を減らすような仕組みも走らせるとのことです。これは、実質的な罰則となっており、正しい介護を行わない介護事業者を淘汰させる狙いがあります。

この提言は、自立支援としてのあるべき介護を実現する、とても優れたものです。もちろん実際の運用になると、そう簡単な話ではありません。しかしそれでも、正しい国の決断は、正当に評価したいところです。

※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『社会保障費抑制へ「自立支援介護」新設の提言案』, 2016年11月8日

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