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ご存知でしたか?医療サービスの東西格差について

西日本の人は、東日本の人よりも病院に行く回数が多い?

高齢化にともなって増え続ける医療費の問題

厚生労働省の発表によると、2014年の日本の医療費は、約40兆円にもなります。これを単純に人口で割ると、1人あたり32.7万円です(自己負担金額は、この3割)。では、単純に人口で割るのではなく、65歳以上の高齢者と、それ以外で分けるとどうでしょうか。

人口の約26%を占める高齢者にかかっている医療費は、年間約24兆円で、全体の58.6%を占めています。一方、人口の74%を占めている65歳未満の人にかかっている医療費は、約17兆円で全体の41.4%にすぎません。

65歳以上にかかる年間の医療費は1人当たり約72万円、65歳未満では1人あたり約18万円になります。簡単に予想できることではありますが、医療費の多くは、65歳以上の高齢者が使っているということです。高齢者の健康には、現役世代の約4倍多くの医療費がかかっているわけです。

高齢化率(総人口に占める、65歳以上の高齢者の割合)が高くなればなるほど、国全体として医療費が上がっていくのは間違いありません。そこで過去にも記事にした通り、国としては現役並みの収入がある高齢者の自己負担額を増やすなど、様々な形で国民医療費をおさえようとしています。

高齢化率が高い地域ほど医療費はかさむのか?

国民医療費の大半が、若者よりも高齢者にかかっていることは間違いありません。ということは、高齢化率が高い地域ほど、人口1人当たりの医療費が高く、自治体の財源も厳しい状態にあると予想することができます。果たして、この単純な予想は正しいのでしょうか。

調べてみると、高齢化率でトップ10にランキングされている県は、必ずしも1人当たりの医療費が高いわけではありません。たとえば高齢化率がトップの秋田県(32.6%)は、1人当たりの医療費では15番目です。また高齢化率5位の和歌山県(29.5%)は、1人当たりの医療費では32番目になっています。

国全体でみれば、高齢化率が、医療費を押し上げることは間違いありません。しかし、地域別にこれを分析してみると、高齢化率は、必ずしも医療費の大小を示しているわけではないというところが面白いのです。

興味深いのは、医療費の高い地域が、四国、九州、中国など、西日本に集中しているということです。逆に、東北地方は高齢化率が高いにも関わらず、1人あたりの医療費はあまり高くはありません。医療費に影響を与えている要因には、高齢化率以外のものがあるということです。

健康の格差が、医療費の格差につながっているのか?

医療費が安いということは、その地域に住む人が健康で、病院を必要としないということなのでしょうか。この仮説が正しければ、健康長寿の地域は、医療費が安いということになるはずです。逆に、健康に問題抱えている人が多い地域は、1人あたりの医療費がかさむはずです。

しかし、例えば平均寿命が全国でもっとも低く、短命ということで有名になってしまった青森県は、実は1人当たりの医療費があまり高くありません。岩手県や栃木県なども同様です。ということは、健康だから医療費がかからないというよりも、そもそも病院に行く人が少ないから、医療費がかかっていないという可能性が高そうです。

各地域の文化的な影響もあるかもしれません。たとえば、先ほどあげた青森県であれば「じょっぱり」という東北地方特有の我慢強さといった文化が、病院の受診行動に影響を与えるといった具合です。しかし、文化的な影響というのは、数値化による分析が困難で、なかなかはっきしたことは言えません。

病院に行きたがらないという文化の有無についても検証が必要です。しかしそれ以上に考えなければならないのは、そもそも、東日本には医師が少なく、使いたくても医療費が使えないという状況にあるという点です。

医療サービスの地域格差が、医療費の不平等な分配につながっている?

厚生労働省の発表によると、日本全体でみると、人口10万人に対する医師の数は233.6人です。しかし、これを都道府県別にみると、かなりの差があるのです。2014年末でみると、東日本で平均を超えているのは、東京都、富山県、石川県、福井県のみです。

一方、西日本で、医師の数が平均を下回っているのは奈良県だけです。あとはすべて平均を上回っています。つまり、西日本の医療費が高くなっていたのは、人口あたりの医師の数が多く、医療サービスが手厚いからとも考えられるのです。

たとえば、人口10万人に対する医者の数は、京都府が最も多くて307.9人、最も少ない埼玉県が152.8人で、ほぼ2倍の格差があります。先にも述べたとおり、医療費の年間平均は、全国でみると1人あたり32.7万円ですが、もっとも高い島根県と山口県では40.6万円で、もっとも安い茨城県では28.6万円です。実に12万円もの格差があります。

医療費の中で、もっともお金がかかるのが、入院です。医師の数が少なかったり、病床数が足りていなかったりする場合は、簡単に入院することができません。できたとしても、できるだけ早く退院させられてしまいます。逆に、豊富な数の医師がいれば、じっくり治療を受けられる(可能性がある)ということです。

もちろん、ただ長く病院にいればいいということでもありません。また、無駄な医療にお金をかけるべきではありません。しかし、必要な時に必要な医療が受けられるかどうかが、住んでいる地域によって変わってしまうのは問題です。

※参考文献
・厚生労働省, 『平成26年度 国民医療費の概況』, 2016年9月28日
・厚生労働省, 『平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況』, 2015年12月17日
・厚生労働省保険局調査課, 『平成26年度医療費の地域差分析』, 2016年9月
・内閣府, 『平成27年版高齢化白書』, 2016年

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