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健康経営で中小企業の成長を支援する?(ニュースを考える)

健康経営で中小企業の成長を支援する?

健康経営とは?

社員の健康を増進することにより、事業の生産性を高める「健康経営」を、中小企業に普及させようとする取り組みが広がっています。これを支援しているのが全国健康保険協会(協会けんぽ)です。日本経済新聞の記事(2016年8月19日)より、以下、一部引用します。

全国の中小企業を対象に、社員の健康を増進し事業の生産性を高める「健康経営」の普及に向けた取り組みが月内にも始まる。全国健康保険協会(協会けんぽ)が支援し、栃木や広島、大分で開発した手法を共有して生活習慣病や病状悪化を防ぎ、医療費抑制を狙う。

大企業の多くはそれぞれの健康保険組合で同様の試みを始めているが、中小企業は対応が遅れていた。(中略)健康診断の受診率が高く、内臓脂肪がたまり生活習慣病を招きやすいメタボリック症候群と判定される社員の比率が低いほど格付けは向上する。同じ県内の中小企業のなかで自社の健診受診率は何位かなども分かるようにして、励みにする。

協会けんぽは、健康指標に関する共通の「格付けバランスシート」を作成し、県内の中小企業を格付けします。簡単にいうと、従業員の生活習慣病や、症状の悪化を防ぐための取り組みをしている企業に、高いランクが与えられます。

たとえば、従業員が健康診断をどのくらい受けているかは、評価するうえで一つの軸になります。大企業であれば、健康診断を会社として全員で受けるのが当たり前かもしれませんが、中小企業ではなかなか難しい問題です。もしかしたら、従業員に丸投げで、会社としてなんの対策もとっていない場合もあるかもしれません。

高ランクのメリットは?

このランク付けにはもちろんメリットがあります。協会けんぽは、地域の金融機関等と連携し、ランキングが高い企業に対しては、融資の面で優遇措置を行ってもらえる仕組みを作っています。中小企業にとっては、地域の金融機関からの融資が受けられるかどうか、またいかに低い金利で融資を受けられるかが、そのまま会社の存続に直結します。

従業員が健康になれば、生産性はあがっていきます。感覚的にも、コンディションがいい時と悪い時で、生産性が変わってしまうことは明らかでしょう。社員の健康に気を遣わなかった結果、社員が欠勤をすれば、本人だけでなく会社にとっても大きな損失です。入院など、長期にわたって休職せざるを得ない場合はなおさらです。また、欠勤している社員の仕事を、周りの社員で補って働くとなれば、それもまた負担になります。

社会全体として考えても、誰かが体を壊して医療機関のお世話になるということは、その分、税金から支払われている社会保障費が増えて、大きな損失です。最近も問題になりましたが、メンタルの部分を含め、からだを壊すまで働かせる会社があるのも事実です。こうしたケースを減らし、医療費を抑えるためには、どうしても健康経営の普及が必要なのです。

この取り組みとは少しだけ離れますが、例えば大手の製薬会社と、宮城県の地方自治体が手を組んで、医療費にかける予算をそのまま予防に使おうという動きもあります。どうせお金を使うのであれば、体を壊す前に、早期の予防に使った方がよっぽどいいという考え方です。

製薬会社としては、病気の予防が進み、薬を使う人が減ってしまうことは、収入減につながってしまいます。しかし、そこを敢えて予防に力をいれる動きを、自治体と提携して始めたというのは、非常に興味深い話です。ヘルスケア産業もこれからは、いかに予防するかという方向に舵を切っていくのかもしれません。

介護の世界でも、要介護状態になってから、その対策にお金をかけるよりも、介護予防にお金をかけましょうという考え方があります。先日も記事にしましたが、要介護からの卒業を本気で目指している、通所リハビリサービスもあります。特に要支援1〜2の人を要介護状態にしないということはとても大切なことです。しかし、国としては要支援1〜2の、どいわゆる軽度の人に向けたサービスを、どんどん削ろうとしています。

ほんとうに生活に気をつける社員は増えるのか?

この取り組み自体は、会社全体あるいは社会全体で健康を意識するようになるためのモチベーションアップにはつながるかもしれません。社員の健康づくりに配慮する会社が優遇され、増えていくのは素晴らしいことでしょう。

しかし以前にも記事にした通り、いつかかかってしまう医療費のことを気にして、生活習慣を見直すことができる人があまり多くないことも事実です。みな、ダメだと思いつつも不摂生に向かいます。そして、健康なからだを失って初めて、健康の大切さに気づくものです。

また健康という指標だけで、企業にランキングをつけてしまうのは、いささか難しい問題も生み出します。たとえば太っている人(いわゆるメタボリックシンドローム)が多い会社はだめというのは、少し乱暴な話です。

それを改善する取り組みにどのくらい力を入れているのかが考慮されるにしても、例えば、そもそもの年齢層が非常に高い老舗の中小企業と、若手で構成されたベンチャー企業を同じ基準で比べるのは、無理があるかもしれません。

さらに、時代の流れとしては、より個人の健康に焦点を当てた医療が増えていくだろうとされています。人工知能(AI)の発達により、個人個人にあった最適の治療プランや予防プランが組めるようになってくれば、会社としてまとめて面倒を見てくださいという流れではなくなる可能性もあります。

もちろん、今回の話にあるような健康経営を流行らせることも重要です。しかし本質的には、どうすれば、どうしても不摂生になりがちな個人が、その意識を治療から予防へとシフトしていけるのかを、皆で考えていくことが大事なのです。

※参考文献
・日本経済新聞, 『「健康経営」中小を支援 医療費抑制へ協会けんぽ』, 2016年8月19日

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