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新しい救急車が買えない自治体がでてきた。本当に限界が近い(ニュースを考える)

新しい救急車が買えない自治体がでてきた。本当に限界が近い

暮らしている自治体によって福祉にも天地の差がある

あまり広くは語られないことですが、日本の社会福祉は、暮らしている自治体によって天地の差があります。介護に使える財源にも大きな違いがあり、たとえば、24時間365日、定額制で、介護サービスが使い放題という定期巡回・随時対応型訪問介護のある自治体と、これがない自治体では、介護の負担が大きく変わります。

こうした格差は言い出したらきりがないのですが、それでも主張したいことがあります。それは、このような自治体の格差が、止められない速度で広がりつつあるという点です。そんな状況を象徴するようなニュースが毎日新聞が報道(2016年9月29日)しているので、以下、一部引用します。

茨城県大洗町消防本部が老朽化した救急車と消防ポンプ車を更新できずにいる。町の財政難で費用を工面できないためだ。赤い車体の消防指揮車を救急車代わりにして患者を搬送した事例もあった。更新予定はなく、当面はだましだまし使うことになりそうだ。(中略)

通常は13〜15年で更新する。15年度に更新する計画もあったが資金がなく断念した。エンジンに不具合が生じたため、5月16日から1週間のつもりで修理に出したところ、部品に経年劣化があって計13日間、町の車両は1台のみとなった。

この間の救急搬送要請は39件。うち7件が出動中で、やむなく消防指揮車に医療用の資機材を積んで現場に急行した。患者が重症の場合は近隣市町に応援要請するつもりだったが、幸い軽症で、消防指揮車で足りたという。修理後は経年劣化の不安を抱えながら、使用を続けている。(中略)

小谷隆亮町長は「いずれ更新に向けて取り組むが、救急車も手入れしながら乗れば支障はないと思う」と答弁した。

救急車は日進月歩で進歩している

日本の救急車は、1991年の医師法改正を境にして、大きく変化をしています。それ以前の救急車は、ワンボックスカーの中に、救急機材を積み込んだだけの簡単なもの(2B型救急自動車、3B型救急自動車など)でした。これが、1991年の医師法改正以降には、いわゆる高規格救急自動車と呼ばれるものになります。

高規格救急自動車は、車内で、救命救急士が救命措置を行うことを前提としており、それ以前の救急車とは比較にならないレベルになっています。これも、年々改良が加えられています。当然、通信技術とAI(人工知能)の導入も盛んです。救急車とは、もはや、1つの技術分野と言ってよいほど、最新技術の塊なのです。

新しい救急車が買えないなら、古いものを大事に使えばよいという話ではないのです。あまり言及したくありませんが、乗せられた救急車のレベルによって、助かる命も助からないといったことが起こりえるという現状認識を持っておきたいです。

特に高齢化が進む日本では、救急車の出動件数もうなぎ上りで増加しています。2015年の実績値では、出動が605万1,168件(対前年比6万6,247件増)、搬送された人は546万5,879人(対前年比5万9,962人増)となり、過去最高になっています。

計算すると、現在の日本では、約5.2秒に1回のペースで救急車が出動しているわけです。こうした状況にあって、新しい救急車を十分な台数保有することは、自治体にとって非常に大事な議題のはずです。

もちろん、自治体もそれを把握しています。それでもなお、救急車を買うための財源がないという状況になっているのです。救命救急の要とも言える救急車にお金が支払えないのですから、介護の財源もまた、かなり厳しい状況にあることは明白です。

これまでと同じことを繰り返すような余裕はない

自治体には、こうした状況にならないように、地域をマネジメントする責任があります。しかし、そうした努力の多くは、残念ながら失敗しつつあると言わざるをえません。今後は、財政破綻していく自治体が増えていくことは避けられないでしょう。

自治体が財政破綻すると、ゴミの収集が有料化されたり、水道やガスの料金も軒並み値上がりします。住民税も上がり、図書館や学校といった公共施設は廃止されます。普通に生きるためのコストは上がるのに、公共サービスの質はとことんまで下げられます。

こうならないためには、これまでと同じようなやり方を繰り返すことだけはさけないとなりません。思いつきのようなイベントを繰り返し、物議をかもすような広告ビデオを作成し、一時的に人を集めることを繰り返しても、人口は増えないし、財政も改善しません。企業誘致の担当者を増やし、広告宣伝費を使っても、企業はそうそう移動してきません。

こうした議論になると、決まって、公務員が攻撃されます。もちろん、自治体の破綻を止められない公務員にも責任があります。しかし、それ以上の責任があるのは、その自治体のリーダーたる地方議員や地元の有力者たちでしょう。民間企業でも、業績が悪ければ、マネジメントの責任が追及されるのが第一です。

そして、そうした自治体のリーダーを選出してきたのは、そこに暮らす人々でもあります。公務員の攻撃もよいですが、その自治体に暮らす自分たちにも責任があるのです。そしてなにより、財政破綻が危険な状態なのは、自治体ももちろんですが、個々の家計もまた、その多くがギリギリのはずです。

新しい救急車が買えないというニュースが伝えているのは、どこかの誰かが失敗したという話ではないのです。その自治体に暮らす一人ひとりが、積極的に、自治体の運営に関わっていかないと、自分自身が財政破綻するという事実を、コインの裏側から婉曲に表現していると考えるべきではないでしょうか。

※参考文献
・毎日新聞, 『茨城・大洗町 財政難で救急車老朽化も買い替えできず』, 2016年9月29日

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