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自動車のヘッドライトの自動点灯が義務化される?その功罪について(ニュースを考える)

自動車のヘッドライトの自動点灯が義務化される?その功罪について

自動車のヘッドライトの自動点灯が義務化される?

国土交通省が、暗くなると自動車のヘッドライトが自動で点灯する「オートライト」の搭載を義務付ける方針を固めたそうです。この背景には、多発している高齢者の交通死亡事故があります。以下、朝日新聞の記事(2016年9月22日)より、一部引用します。

2014年に65歳以上の歩行者が亡くなった事故の発生時間帯を調べ、日没時間を照らし合わせたところ、一年を通して事故は日没の時間帯に集中していた。

たとえば、日没時間が午後5時台だった14年9月の死者は、午後4時台が3人▽5時台10人▽6時台13人▽7時台5人▽8時台3人▽9時台2人だった。日没と重なる5時台と、直後の6時台が突出して多かった。

車や二輪車が歩行者を巻き込む交通事故を起こした場合、原則として、車両側に責任があります。歩行者が飛び出したり、車道側に転倒したりしたとしても、基本的には車両側の不注意運転ということになるからです。

今回のオートライトの導入は、車両側が薄暗い状況でも、歩行者を見落とさないようにするためと考えられます。また、それ以上に、高齢の歩行者が、車両に気付きやすくするためであるとも言えるでしょう。特に、白内障などを患っている高齢者であれば、天気が悪い日や夕方の薄暗い時間には、車両の動きが全然見えていないということもあるので注意が必要です。

しかし、運転をする人であれば、誰もがわかることですが、道路を走行していて、対向車が全くいないという状況はめったにありません。また前後に車がいないということも少ないでしょう。こうなると、オートライト(特にハイビーム)が、必ずしも良いとは言えません。対向車からハイビームで照らされ、視界を奪われることは十分に考えられます。運転手が白内障を患っている場合は、対向車のヘッドライトが視界を妨げることも懸念されます。

事故を防ぐための法整備の流れ

この数十年で、事故を防ぐための法律が少しずつ整備されています。まず、1985年にシートベルトの着用が義務化されました。現在ではほとんどの車が、シートベルトをしないと警報音がなるように出来ていますが、わずか30年前まではそれが徹底されていなかったのですから驚きです。

1999年には、運転中の携帯電話の使用や、カーナビやテレビを注視することが禁止され、2004年には手に持って使用することがそのまま罰則の対象になりました。2000年には6歳未満の乳幼児に、チャイルドシートの装着が義務化されました。また2008年には後部座席も含めて、シートベルトの着用が義務付けられています。

これらの法整備に加えて、エアバッグなどが開発され、多くの人が事故の衝撃から守られてきました。一部、エアバッグによる事故なども起きてはいますが、相対的に救われた人の方が多いでしょう。

このような法整備やエアバッグの搭載などは、その多くが、事故があった時に、少しでも被害を小さくしようとするものです。こういった取り組みをパッシブ・セイフティといいます。事故は起こるものだ、という想定の元、取られている対策です。

しかし、これからの高齢社会で求められるのは、事故を未然に防ぐアクティブ・セイフティでしょう。国土交通省によれば、交通事故の原因は、人に起因するものが9割以上だそうです。どんな人であっても安全な運転ができるように、先進安全自動車(ASV)がどんどん増えてきています。

最近では多くの車が衝突する前に自動でブレーキがかかるようになっています。また車間距離を一定に保ち、他の車の接近注意を促すシステムもついています。自動で車線に沿って走ることができるレーンキープアシストやふらつき警報もあります。こうした機能もすべて、標準装備される日はそう遠くないかもしれません。むろん、自動運転がベーシックになる日も近いでしょう。

高齢のドライバーはたくさんいる

2013年の段階で、乗用車の世帯保有率は約8割でした。高齢化が進むにつれて、高齢ドライバーは増え続けています。特に、地方では免許保有者の高齢化が顕著です。

この状況を受けて、警察庁は1998年から75歳以上に対して、運転免許更新時に高齢者講習を義務付けてきましたが、2002年からは70歳以上に対象年齢を引き下げています。さらに、2009年からは75歳以上に対して、講習予備検査として認知機能検査を加えています。

検査で認知症の疑いがある場合には、過去の事故歴や違反歴などを確認され、医師の診断を受けることになります。もし認知症を発症しているとなれば、運転免許の更新はできなくなります。

軽度認知障害を持っていても、日常生活や車の運転には何の問題もない人はいます。このような人まで免許証を返納するとなると、他に移動手段がなくなり、生活に支障をきたしかねません。認知症の取り扱いは、非常に難しい問題です。

先ほども述べたように、特に、公共交通の弱い地方では、運転免許の返納は死活問題です。生活が不便になるだけでなく、行動範囲が狭まってしまうことは、認知機能をさらに低下させ、生活不活発病を引き起こす原因にもなってしまいます。

これからどんどん進む免許保持者の高齢化に向けて、アクティブ・セイフティが存分に盛り込まれた車両の開発は急務です。一刻も早い自動運転化が期待されます。過去にも記事にした通り、自動運転により多くの産業の構造は変わり、新たな問題も起こりますが、事故が未然に防がれることが優先です。

高齢化の対策として、コンパクトシティを取り入れていくことも必要です。役場や病院、文化施設が居住地付近に集中していて、高齢者でも「歩いて暮らせる」まちになれば、そもそも車は必要なくなります。歩いて行動することで、高齢者の健康面にも良い影響を与えるかもしれません。

またコンパクトシティの中にも、あえて道を狭くして、カーブさせたコミュニティ道路や、スピードを抑えさせるスピードハンプなど、存分にアクティブセイフティを盛り込むべきでしょう。

いずれにせよ、今は自動運転化までの過渡期です。この時期に起きる事故を未然に防ぐ対策を取り、出来る限り、高齢になっても車を安全に運転し、安心して暮らせる街づくりを目指したいものです。

※参考文献
・内閣府, 『平成27年交通安全白書』, 2015年6月
・国土交通省, 『今後の自動車の安全対策の方向性について』, 2016年6月24日
・朝日新聞, 『高齢者の事故、日没時に集中 車の自動点灯で防止狙う』, 2016年9月22日
・東京大学高齢社会総合研究機構, 『東大がつくった高齢社会の教科書』, Benesse, 2013年

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