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高齢者の雇用は、若者の雇用を奪うのか?

高齢者の雇用は、若者の雇用を奪うのか?

高齢者が働くことの意義について

高齢者が働くと、国の年金の支給総額を減らせたり、働くことにより介護予防となったり、収入の増加によって消費が増えたりと、良いことが多いのです。しかし、そうした考えは、若者には浸透していないという調査結果(村田, 2016年)があります。

調査対象となったのは、16〜70歳以上の1,573人です。この調査対象のうち「60歳以上の人を雇用するのは、日本の経済にとって良いことだ」としたのは「どちらかといえば」という回答と合わせて「そう思う」という回答が75%を占めます。これは、社会的にもよいコンセンサス(合意)が得られていると言えるでしょう。

しかし、こうした60歳以上の雇用が「若い人の雇用を奪う」という項目への反応が衝撃的なのです。この項目については、男女とも、ほとんどの年代において、20%以下なのですが、16〜29歳の比較的若い世代においてだけ、40%近くが「若い人の雇用を奪う」と考えていることがわかりました。

日本全体でみると労働者の不足のほうが深刻?

日本では、毎年約70万人程度の学卒者が生まれています。このうち、約9割が就職していますが、1割程度の学生は、就職に失敗していたり、就職を選ばない方向にあります。ここで、1割にあたる7万人の学卒者は、高齢者に仕事を奪われているのかというと、それは違います。

社会全体としては、毎年30万人以上の労働力が不足とされています。また、その深刻度は、高齢化の波によって、年々大きくなってきているのです。就職に失敗してしまう学生が生まれてしまうのは、足りない雇用を高齢者と争っているからではなく、雇用できる人材としての合格ラインを越えさせられていない教育の問題なのです。

ただし、正社員の地位という意味でいうと、若い世代が不利になっているという事実はあります。日本は、労働者の権利が非常に強く、事実上、解雇できない国です。そうなると、経営者としては、正社員を増やすのはリスクでしかありません。できるだけ、雇用期間のある非正規で採用して、リスクを下げようとするのは、経営上、仕方がありません。

当然、誰もが正社員になりたいと思い、そこに向けて就職活動を頑張るでしょう。このとき、高齢の労働者は、下手に正社員化して、厚生年金の対象となると、年金の支給額が下げられたりもするため、非正規でもよいと考える人も多いのです。すると、経営者と高齢の労働者の間に、社会全体のためにはよくないwin-winの関係ができてしまいます。ここに、正社員を望む学卒が、不利になってしまう現実はあると考えられます。

確かに、全体として考えると、労働力不足のほうが深刻であり、若年層が不利になるような労働環境は、時間とともに是正されていくでしょう。しかし、より細かい労働条件などで考えたとき、高齢の労働者の存在によって、若年層が厳しい労働条件を突きつけられるということはあると思われます。

介護予防のためにも高齢者の雇用は増やしていくべきだが

介護予防のためにも、高齢者の雇用は増やしていくべきでしょう。同時に、それが、日本の未来を支える若年層の雇用条件にネガティブなインパクトを与えないように、注意しなければなりません。

日本全体のためには、正社員と非正規の社員の違いをなくすこと(特に社会保障面)が第一です。また、新卒の定義を、学校卒業から3年くらいの期間まで伸ばし、新卒として企業に入りやすい環境を準備することも重要になります。

若者が将来を夢見ることができる社会の構築が、そもそも、優先的なテーマです。その上で、若者もいずれ高齢者になるのですから、高齢者になっても活躍できる社会というテーマが成立するのです。若者を置き去りにした高齢者の雇用ということになってしまえば、日本は(ますます)おかしなことになってしまいます。

※参考文献
・村田 ひろ子, 『仕事の満足度を左右するのは,仕事内容か,人間関係か : ISSP国際比較調査「仕事と生活」・日本の結果から』, 放送研究と調査 66(5), 72-89, 2016-05

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