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介護に関わる人こそ、合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)について理解しておきたい

合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)

合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)とは?

合成の誤謬(fallacy of composition)とは、小さな視点(ミクロ)からは正しいことが、その集合としての全体の視点(マクロ)からは正しくないといった場合を示す、経済学上の概念です。非常に重要な概念なのですが、これだけではなんのことかわかりません。もう少し詳しく考えてみます。

たとえば、個人レベルでは、質素倹約を大切な価値として生きることが奨励されることが多いでしょう。ですが、この社会に生きる全ての人が、質素倹約を徹底した場合、経済は悪化し、慢性的な不況になってしまいます。

たとえば、企業レベルでは、借金を減らし、強い財務体質を築くことが求められるでしょう。しかし、全ての会社が借金を減らす方向に動けば、設備投資などが抑制され、景気が悪化してしまいます。貸し出し先がなくなった銀行の倒産なども起こり、社会不安が造替してしまいます。

たとえば、夏にでてくる蚊(カ)がいなくなれば、嬉しい人も多いと思います。これが実現すれば蚊を媒体とした感染症などもなくなります。しかし、自然界から蚊がいなくなってしまえば、蚊を食料とする他の生物も絶滅し、生態系が崩れてしまいます。

合成の誤謬は介護の現場にも存在する

こうした合成の誤謬は、介護の世界にも存在しています。典型的なものとして、以下、3つほど例示してみたいと思います。他にも存在すると思われるので、みなさまも考えてみてください。

1. 要介護度を下げる活動

要介護者の要介護度が下がり、元気で自立した生活を営める人が増えるのは良いことです。そのために、リハビリをはじめとした様々な活動が実施されています。しかし、要介護度が下がったことによって、介護保険がカバーする範囲が狭くなり、これまで受けられていた介護サービスが受けられなくなったりもします。要介護度が下がったことによって介護施設を追い出されてしまい、家族の介護負担が高まり、その後の暮らしに困ってしまうということも現実にあります。要介護度が下がれば、本来は、介護の負担も減るはずです。しかし現実には、むしろ負担が高まってしまうこともあるのです。

2. 要介護者の希望をかなえる

要介護者の希望をかなえることは、そもそも、介護保険制度の根幹となる思想です。ですから、介護職は、要介護者の希望を理解し、その実現に向けて頑張ります。ここで注意したいのは、要介護者の希望が、必ずしも家族の希望と一致するとは限らないという点です。そして、要介護者の希望には、家族とのありかたが必ず含まれています。介護職が要介護者の希望を実現しようと動いたら、家族の介護負担があがってしまったりすることも少なくありません。これを避けるためには、介護職は、要介護者だけでなく、家族みんなの希望を理解しておく必要があるでしょう。

3. 要介護者を支援すること

要介護者は、様々なことが、自分一人の力ではこなせない状態です。そこで、家族や介護職が、できなくなったことを、代わりにやってあげることになります。しかし、皮肉なもので、こうした支援が増えれば増えるほどに、要介護者が自分でできないことも増えていってしまう傾向があるのです。要介護者に「ありがとう」と言ってもらうことが、結果として、要介護者のためにならない場合も多いのです。この点を理解しているベテランの介護職は、安易な支援を行いません。しかし、それを要介護者は「この介護職は助けてくれない」と感じてしまいます。非常に難しい部分です。

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