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ジェロントロジー(加齢学)を超高齢社会の日本の教育の柱に

ジェロントロジー(加齢学)を超高齢社会の日本の教育の柱に

ジェロントロジーとは?

ジェロントロジー(Gerontology)という学問をご存知でしょうか。ジェロントロジーは、ギリシャ語で老人を意味する「Geront」に、学問を示す「ology」が接尾している言葉です。一般的には「老年学」や「加齢学」というふうに和訳されます。この学問は「Aging(加齢・高齢化)」が研究テーマとして、加齢に伴う心身の変化を研究し、高齢社会に起こるさまざまな課題を解決することを目的としています。

ジェロントロジーが生まれたのは、今から100年以上も前のフランス(1903年)です。その後、アメリカで発展してきました。1937年に結成された加齢研究クラブという団体には、生物学、臨床医学、心理学の領域の専門家が会し、高齢期の研究のみならず、広く加齢の過程をふまえ、人間を総合科学的に検討しようと試みました。その後、1944年にジェントロジー学会が誕生し、日本には1952年頃に導入されたと言われています。

ジェロントロジーは「Aging」に関するすべての研究を含むので、その研究範囲は身体・認知機能の加齢変化に留まらず、多岐にわたります。

例えば、高齢期の生活環境の変化については、時間の使い方や余暇活動、同世代との関係、生涯学習などが研究テーマになります。労働や退職については、働くことの意味や、退職が健康に与える影響、定年制の是非やワークシェアなどについての研究が行われています。また、介護については、介護予防、アセスメント、ケアプラン、サービスモデル、公的保険や民間保険、成年後見制度など、あらゆる面からの研究が推進されています。

その他にも、政治、経済、社会・文化、衣食住、高齢者医療、死と倫理についてなど、幅広い知見を集積し、その情報をもとに新たな価値やシステムを創造していくことを目指しています。こうした意味では、ジェントロジーとはまさに「人間学」と言ってしまって良いのでしょう。

日本は世界一の高齢化課題先進国

平成28年版の高齢社会白書によれば、日本の65歳以上の高齢者の数は3,392万人にのぼります。高齢化率は26.7%で、すでに4人に1人が高齢者です。ジェロントロジーが日本に導入された1950年代は、高齢化率が5%に満たないレベルでしたが、今や、日本は世界一の長寿国となっています。高齢化に関しては世界で最も深刻な状況ですが、まだジェロントロジーの研究や教育には遅れをとっているのが現状です。

介護についてみると、介護保険制度における要介護者または要支援者と認定された人は、2013年末で569.1万人にのぼります。2003年末と比べても、この10年で約200万人増加しています。よほど大きな事件がない限り、この高齢化の流れが変わることは期待できません。

こうした状況で、要介護者を出来るだけ増やさないようにしていくには、ジェロントロジーの知見を活かし、あらゆる方向から高齢者への関わり方を考え、対策をとらなければなりません。過去にも記事にしている通り、要介護度の認定基準を厳しくして、サービスを受けづらくするような制度の改悪では、根本的な解決には至りません。

まず、高齢者の捉え方の意識改革が必要です。人生90年の時代において、65歳以上を一律に高齢者として扱うことで、高齢期の就労などにも、さまざまな課題が生まれています。定年の制度を見直し、高齢者が活躍できる場を作っていくことは、膨らみ続ける社会保障費の削減にも繋がります。もちろん働き続けられることが心身の健康や生きがいに繋がるのは間違いありません。

高齢者の消費力に期待し、高齢者のニーズを踏まえたサービスや商品の開発により、高齢者の消費活動を活性化させることも必要でしょう。高齢者の交流意欲や学習欲などについての深い研究からも、新しい市場を形成できる可能性が十分にあります。

また安心で活力のある環境を創るには、ジェロントロジーを前提とした住宅の開発による住環境の整備や、パーソナルモビリティなどの移動・交通ネットワークの整備も欠かせません。医療・介護においても、ICTの活用がカギになります。予防の段階も含めて、できるだけ病院や施設を利用せずに、住み慣れた家で、最後まで暮らしていけるような地域システム作りが必要です。

海外ではジェントロジーの教育が進んでいる

日本でもすでに多くの改革が動き出していますが、まだまだ教育の面では欧米よりも遅れています。アメリカでは、単位としてジェロントロジーの履修が取り入れられている大学が多く見られます。加齢に関するあらゆる方向からの研究は、高齢者への対策としてだけでなく、生から死にわたる住民の生活ニーズに対応していくうえで重要です。

繰り返しになりますが、日本は世界一の長寿国であり、高齢化の課題先進国です。ジェロントロジーを日本の教育の中心に据えていくことが、介護に関わる多くの課題を解決する糸口になるかもしれません。

日本でもなんとか、社会的な注目をジェロントロジーに向けて、それを教育過程の内側においていかないとなりません。このためには、現在介護をしている人や、介護業界にいる人々が団結して、社会に訴えていく必要があるでしょう。

※参考文献
・内閣府, 『平成28年版高齢社会白書(全体版)』, 2016年
・東京大学高齢社会総合研究機構, 『東大がつくった高齢社会の教科書,第3章,超高齢未来の可能性~課題解決に向けた方向性』, Benesse, 2013年
・高橋 亮, 『アメリカ合衆国のジェロントロジー教育』, 保健医療社会学論集, 第11号, 2000年

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