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認知症ケアの理念とケアのポイント

認知症ケアの理念とケアのポイント

認知症ケアの理念

認知症ケアにおいては「その人らしさ」が大切にされます。「その人らしさ」とは、実は簡単な概念ではありません。しかしこれは、認知症をめぐる過去の反省から強調される部分となっており、認知症ケアの理念として、とても重要なところです。

過去、認知症については、その症状の緩和や改善だけに注目が集まっていました。しかし、認知症は時間とともに進行していく傾向があります。結果として、認知症そのものに注目していると、介護に希望が持てないということが起こってしまっていたのです。

現在、介護業界は、認知症をめぐるこうした古い考え方の刷新に努めています。「認知症という病気になってしまった人」という概念を、「認知症を抱えながらも、その人らしい人生を送ろうと戦っている人」という概念に変えようとしているのです。

認知症ケアのポイント

この「その人らしさ」への注目、新しい概念への変換には、以下、5つの視点を大切にしていくことが求められます。もちろん、こうした視点を持てば、それで認知症ケアそのものが楽になったり、病気としての認知症が緩和されたり、改善したりはしません。

それでもなお、独自の手探りになりがちな認知症との接し方について、十分に参考になると思います。理想論に過ぎないという捨て去りも可能ですが、これらの視点は、多くの介護職が現場で積み上げてきたノウハウであり、ただ捨て去るにはもったいないと感じます。

1. 本人の自由意志を(可能なかぎり)尊重する

「その人らしさ」には、本人の自由意志を尊重することで近づけます。認知症という病気ではなく、その人を中心とするケアであるためには、その人を介護者に都合のよいようにコントロールしたいという気持ちを抑えないとなりません。認知症が進行すると、周囲からは意味のわからない行動をとることがあります。しかし、そうした時も、むやみに行動を押さえつけるのではなく、周囲の大きな迷惑にならないかぎり、本人がやりたいようにさせてあげるように心がけます。

2. 本人が生み出す物語に参加する

誰もが、自分の人生の中に、物語を構築しています。認知症の人も、周囲からは理解しにくくとも、自分なりの物語の中に生きています。そうした物語が、現実とは異なるおかしなものに感じられたとしても、本人はいたって真面目です。それが事実ではないということを伝えようとするのではなく、たとえ虚構であっても、その物語に参加するような形でのケアが求められます。

3. 平等な人間として接する

援助する、されるという関係ではなく、平等な人間として接することが求められます。認知症の人に対しては、介護者は、どうしても「ああしなさい」「それはダメ」「急いで」といった具合に、上から目線での対応になりがちです。仕方のない面もあるとは思いますが、本人がしたいと思っていることを中断したりするのは、可能なら、行わないほうがよいと考えられます。

4. 共感できるところを探す

認知症の人とのコミュニケーションにおいては、本人が考えている現実について、否定するのではなく、受け入れることが求められます。しばしば、こうした本人の現実は、周囲の人が認識する現実とは異なっています。明らかな認識の誤りもあったりしますが、それを否定してしまうと、コミュニケーションが成立しなくなるケースが多いようです。共感できるところを探すようにすると、本人は自信を深め、症状が和らぐこともあります。

5. 本人が持っている力に気づく

介護職が、認知症の人にはできないだろうと思っていたことが、後に間違いであったことに気づくことはよくあります。そうした状態は、継続性がなく、気まぐれに出現することもあるのですが、それでも、そこには、出現しにくいだけで、力が残っていることは事実です。相手のできることを見出し、それを支援するということは、とても創造的な取り組みです。簡単ではありませんが、そこには希望もあります。

認知症ケアで折れてしまわないために

認知症と向き合っていると、どうしても、周囲の理解は得にくく、孤独になりがちです。しかし、認知症はもはや珍しい病気ではなく、誰もが経験する可能性の高いものです。実際には、出会えていないだけで、自分と同じように、認知症と戦う仲間がいます。

そうした仲間との出会いを目的としたイベントは、少しずつではありますが、日本各地で増えてきています。認知症カフェ家族会RUN TOMORROW(RUN伴)など、ケアマネに相談しながら、自分にあった活動に参加してみてください。

実は、今回述べたような5つのポイントも、こうした仲間との付き合いの中で、自然と身についていくことも多いのです。認知症と向き合ってきた先輩が、実際にどのように認知症の人と接しているのかを見る機会には、きっと大きな学びがあるはずです。

※参考文献
・黒澤 貞夫, et al., 『介護職員初任者研修テキスト』, 2013年

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