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夕張市の財政破綻から見える日本の未来。持続可能なまちづくりと医療を考える。

夕張市の財政破綻から見える日本の未来

課題先進国における課題先進地域である夕張市

日本は人口減少社会に突入しました。総務省統計局によると、2015年の人口は1億2,700万人、高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)は26%となっています。よく聞く話だとは思いますが、現在は、4人に1人が高齢者です。

このままの推移が続くと、2060年には人口は1億人を切って8,674万人、高齢化率は40%を超えると想定されています。つまり、あと40年程度で、2.5人に1人が高齢者になるという状況です。

そんな、超高齢社会をむかえている日本の中で、もっとも深刻な状況に至っているのが北海道の夕張市です。かつては炭鉱の町として栄え、夕張メロンの産地としても有名です。2006年の段階で13,045人だった人口は、2015年には8,845名まで減少しました。

前回の国勢調査が行われた2010年の10,922人と比べると、5年間で2,077人、19%も人口が減少したことになります。日本全体で見ると、この5年の人口減少率は0.2%なので、夕張市の人口減少率が際立っていることがわかります。

夕張市には、一時期は12万人近い人口があった

まだ記憶に新しい方も多いかもしれませんが、夕張市はちょうど10年前の2007年、財政破綻した都市として脚光を浴びてしまいました。353億の赤字を抱え、現在も財政の再建に向けて、改革を続けているところです。

前述したように、かつては炭鉱の町として栄え、人口はピーク時で11.6万人(1960年)を数えました。しかしながら、エネルギーの主流が石油へと変わっていく中で、炭鉱の閉山が相次ぎ、夕張市の人口は大幅に減少していきます。

それに伴う鉱山税や住民税の税収減は、市の財政に大きなダメージを与えました。1979年から1994年までの閉山処理に、市は583億円もの大金を費やしたとされています。また、炭鉱会社が潤っていたときに担ってきた病院事業は、市立病院に移管されました。

炭鉱から観光への転換後も止まらなかった人口減少

石炭に変わる産業として、第3セクター(地方公共団体と民間が合同で出資する企業)による観光施設の整備が進められ、市は、観光振興に過剰な投資を行います。1990年には「活力あるまちづくり優良地方公共団体」にも選ばれるなど、うまくいっているかのように思われた時期もあったのです。

しかしバブル崩壊後、どんどん財政は苦しくなり、さらに赤字を隠すような粉飾決算も発覚し、とうとう財政破綻を迎えてしまいます。財政再建に向けて、市は徹底的なコストの削減を迫られます。当然、市の職員数を大幅に減らし、給与は大幅にカットされます(4割から5割の給与カットも行われました)。

また住民にも大きな負担が求められます。例えば、住民税は他の自治体に比べておよそ1.5倍の額になりました。他にも各自治体が決めることのできる軽自動車税が上限まで引き上げられるなど、とにかく税金の高い自治体になりました。

そして夕張市は「最高の負担、最低のサービス」という汚名を着せられることになりました。「炭鉱から、観光へ」という大戦略は、結果としては、失敗に終わってしまったのです。

医療体制の大幅な縮小による不安とストレスがもたらしたもの

「高齢者と子供は守る」という国の方針で、一旦は先送りされた学校や病院への負担も、結局は避けられなくなります。10年前に4校あった中学校と、7校あった小学校はそれぞれ1校ずつになりました。これが、働き盛りで、子育て世代の住民が大幅に減ってしまう一因となります。

炭鉱閉山にあたり、市に移管されていた夕張市立総合病院は、大幅に縮小されます。もともと171床あったベッドは、19床まで削減されました。そして、総合病院から診療所に変更されます。もちろん医師や看護師の数は大幅に減りました。

また、診療所では対応できない症状が増えてしまいます。例えば、人工透析は出来ず、CTやMRIもありません。夕張市民は、脳に異常が出てCT検査が必要な場合、市内の診療所では見てもらうことが出来ず、他の地域まで通院しなければならないのです。

医療体制が万全でなくなったという事実は、住民にとって非常に大きな不安とストレスになります。これも、夕張市の人口を減少させる大きな理由になったと考えられています。

診療所が起こした大きな改革

夕張市立診療所は、民間の医療法人が引き継ぎ、有床診療所と介護老人保健施設の運営に切り替えられます。この医療法人財団は、病院の機能が小さい分、訪問診療や訪問介護に力をいれました。キュア(治療)からケアへ、という目標を掲げ、できるだけ患者を寝たきりにしないようなケアに向かったのです。

その結果、2001年から2006年まで年間で81万円だった高齢者一人当たりの診療費は、2007年から2012年では76万9000円に減ったそうです。日頃から、訪問診療や訪問介護で患者と医師、あるいは患者と看護師や介護士が接触することで、健康状態を的確に把握することができます。そのおかげで、適切な治療ができます。

また、とりあえず救急車を呼んだり、とりあえず病院で見てもらったりということが減っていきます。さらには、病院に行っても医療体制が万全ではないのであれば、そもそも病気にならないようにしようという住民の健康への意識の変化が起こったとも考えられるのです。

夕張モデルがこれからの日本の未来に活かせるのか

こうした、夕張市の財政再建モデルは、まさに、日本全体の未来を示していることに気づくでしょう。超高齢社会の中で、持続可能な都市、地域をつくっていくために何が必要なのかを、私たちは夕張市の苦悩から学ぶべきだと思います。

石炭の採掘に頼ることが出来なくなった地域が、いかに他の方法で生き残っていくのか、あるいは、どういう道を選ぶと失敗するのかも見えてきます。夕張では観光業への転換に失敗し、その時に無駄につぎ込みすぎたインフラへ投資のせいで、多くの負債を抱える結果になっています。

また東日本大震災以降、原発をめぐる問題にはいまだ答えが出ていません。安全面を考えて廃炉を進めるべきだという意見がある一方で、原発があるおかげで、地域の経済が成り立っているという意見もあります。エネルギーの転換と、まちづくりを共存させるためのヒントを得ることもできるかもしれません。

夕張の医療への取り組みは、いかにコンパクトな地域医療や在宅医療を作り上げていくかの参考にもなります。実際に、病院が小さくなっても、住民の健康維持については、医療が成立していると考えられる部分もあります。

もちろん、夕張市の医療費が減っている話や、大きな病院があったときと死亡率が大きく変化していないという話は、それだけで喜べない現実があります。多くの人口が流出している中で、そもそも病気を抱えている人が、医療体制の整っている都市に出ていった可能性も高いからです。

夕張市に起こったことは、どこか遠くの貧しい国の話ではありません。夕張市は、日本全国の地域がこれから経験する未来であり、私たち一人ひとりの将来でもあります。その意識を持って、それぞれが来るべき将来への準備をしておくことが大事になってきます。

※参考文献
・加藤 智子, 『地方自治体の財政再建 -夕張市の再生への取組-』, 立法と調査, 2016.3, No375
・総務省統計局, 『人口推計(平成25年10月1日現在)』, 平成26年4月15日
・夕張市HP, 『平成27年国勢調査結果概数,夕張市の統計』, 平成27年10月1日
・日経ビジネスONLINE, 『財政破綻の夕張市に見る、過疎地におけるこれからの医療・介護』, 2010年10月18日

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