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心のバリアフリーを目指して。ユニバーサルデザイン2020とは?

ユニバーサルデザイン2020

首相官邸の発表によると、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議というものが立ち上がっています。政府は、2020年に向けて共生社会施策集をつくろうとしており、今回は、その中間発表にあたります。

この会議では、学校教育、まちづくり、公共交通機関、宿泊施設、商業店舗など、さまざまな場面で起きる障害(バリア)の解消や、差別をなくすための施策を考えています。今回の中間発表で提示された例をいくつか見てみましょう。

障害者や高齢者が学校の授業に参加して、ともに学び合う

文部科学省と厚生労働省は「心のバリアフリー推進会議(仮称)」を設置して、児童生徒の障害者や高齢者に対する理解を深める取り組みを検討しています。一番の目玉は、障害者や高齢者の方々が、実際に授業に参加する取り組みを行うことです。

まずは、推進会議がコーディネーターになり、自治体内の福祉部局、教育委員会、障害者支援関係団体などのネットワーク作りを促進します。ネットワークを作った後は、実際に児童生徒と障害者らの交流や共同学習を始めます。

児童生徒は、なかなか普段ふれあうことのない、さまざまな障害を抱えた方々とのコミュニケーションを図ります。そこで、よりリアルに何が障害(バリア)となるのかを学ぶのです。障害者や高齢者がどんなことに困っているのかを知ることができれば、どのように接すればいいかを理解することもできます。

また、児童生徒に日頃から指導している教職員にも、専門的な指導法を学んでもらいます。これについては、教員養成課程や、10年に1度行われている教員の免許更新講習の時に取り入れられていく予定です。

サービス業の接遇に欠かせなくなる障害者の目線

公共交通機関やサービス業の分野では、事業者向けに、障害者へのサービス水準の向上にむけた、接遇のガイドラインを策定します。接遇とは、サービス業などの接客時に、お客様に対して接するときのスキルを表します。「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」といったような言葉遣いから、お客様をご案内する時の動き、実際にサービスをする方法など、あらゆる接遇が存在します。

近年では、交通機関や飲食店などのハード面のバリアフリーはかなり進んでいます。たとえば、駅のホームやバス停などでは、あらゆるところで段差をなくす取り組みが行われていますし、車椅子向けのスロープが併設されているのも当たり前になってきています。

またトイレなども、車椅子でも入りやすいように、大きく開く、横スライド式の扉が増えています。またオストメイト対応(人口肛門などを使用している方への配慮がされている)のトイレも、よく見かけるようになりました。

その一方で、ソフトの面、つまり障害者や高齢者への対応については、まだまだ理解不足で配慮が行き届いていないことも多いようです。今、どのようなサービスが求められているのかを、的確に判断するのは、相手が健常者であっても難しいことです。障害者や高齢者が相手では、なおさら接遇が難しくなるのは当然でしょう。

身体の障害だけでなく、精神的な疾患を抱えている場合もあります。一見、健常者となんら変わりないように見えて、実は脳機能に障害を抱えていることもあります。あらゆる障害に対して、一定の理解を深めておく必要があります。

この研修や教育については、事業者の責任ある立場の人びとが、実際に障害を持って生活をされている方と一体となって取り組み、マニュアル化していくことが大切です。また、さまざまな企業で行われている接遇改善に向けた取り組みの中の中から好事例を集め、他の企業でも実践できるような研修を策定することも求められます。

ボランティアとしてではなく、予算化して雇用をつくる

先ほどの学校での取り組みも、企業での取り組みにおいても、障害者の方々からの、よりリアルな指導、教育が必要です。そのうえで大切なのは、このような研修をしっかりと予算化し、仕事として携わってもらうことです。障害者や高齢者のボランティアで済ませてしまわないことに意味があります。

お金を払って研修を受けるのと、無料で研修を受けるのでは、まずそこに向かう姿勢や期待値が変わります(児童生徒は直接、受講料を払うわけではありませんが)。たとえば無料で受けられる研修であれば、研修中に寝てしまってもなんとも思いませんが、20万円を払って研修に出る場合はどうでしょう。何かしら身に付けてやろうという気持ちになりますよね。

もちろん予算化して、有料にするのはそれだけが理由ではありません。大切なポイントは、これからより住みやすい街を作っていくうえで、障害者や高齢者がしっかりと力を発揮し、活躍できる環境をつくっていくことです。障害者や高齢者が、ボランティアではなく、プロの仕事として、社会的な役割を得ていくことも大事なのです(もちろん、ボランティアを否定するものではありません)。

2016年4月1日からは、障害者差別解消法が施行されています。この法律では、障害者が、障害を理由として、不当な差別的取扱いを受けないことや、必要かつ合理的な配慮が行われることが求められています。

すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しあいながら共生できる社会の構築が求められています。その実現には、とにかくコミュニケーションが重要です。健常者が、子供の頃から、障害者や高齢者と関わる機会を増やし、その理解を深め、心のバリアをつくらないで済む世界を目指したいものです。

※参考文献
・首相官邸, 『ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議(第2回)議事次第』, 2016年6月7日
・厚生労働省, 『障害者差別解消法 福祉事業者向けガイドライン』, 2015年11月

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