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既存の介護制度では、介護をする家族が軽視されてしまう。介護殺人や虐待を減らすために本当に必要なこと。

既存の介護制度では、介護をする家族が軽視されてしまう

地域包括ケアの概念を示す「植木鉢の絵」について

地域包括ケアという言葉をご存知でしょうか。

きたるべき超高齢社会を乗り切るために示されたもので「団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることが出来るよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」ことを目標とするものです(厚生労働省ホームページより)。

様々な識者が議論を交わし、検討を重ね、改訂しながら、地域包括ケアのあるべき姿が報告書として示されています。この、最新の報告書が、今年の3月にまとめられました。今回は、その中で、介護をする家族として知っておくべき変更点について考えてみたいと思います。なお、報告書は毎回、時勢に応じて様々な改訂や変更が加えられています。

特に着目したいのは、地域包括ケアシステムをわかりやすくしたイメージ図として有名な「植木鉢の絵」です。これは、現時点では、地域包括ケアに関する最新の概念となります(三菱UFJリサーチ&コンサルティング, 2016年)。そのイメージ図を、以下に示します。

地域包括ケア

実は、上に示した「植木鉢の絵」は、過去のものと比較すると、いくつかの変更があることがわかります。その中でも、最も大きな変更点として注目されているのが「お皿」のところの文言です。

過去の「植木鉢の絵」においては「お皿」のところには「本人・家族の選択と心構え」と書かれていました。これが、今回示した最新のものでは「本人の選択と本人・家族の心構え」というふうに変更されています。「選択」は本人のものであり、家族のものではないとされたのです。

この変更では、自分らしく生きていくための土台の中心は、介護をする家族ではなくて、あくまでも本人(要介護者)であることが強調されました。逆に言えば、この変更の背景には、本人の意思が正しくくみとられていないという悲しい現実があります。

例えば、本人は自宅に住み続けたいのに、家族が施設への入所を決定していたりします。本人はデイサービスやショートステイなどを利用せずに、自宅でゆっくりと過ごしたいと考えているのに、その希望が通らなかったりもします。これをただ「仕方がない」と言っていてよいわけはありません。

介護の専門職の教育における軸とは?

確かに、要介護者を介護する家族の負担は相当なものです。そして、その負担を軽減するような仕組みや体制が十分ではないことは明らかです。残念ながら、こうした仕組みとしての介護者支援法は、日本では(まだ)整備されていません。

だからと言って、既存の介護保険制度で、家族の負担を軽減するというのは、無理な話です。その理由としては、まず、介護保険制度の基本理念には、その人の人生の主体は、あくまでも本人であるということが明言されていることがあります。

また、介護保険制度から出るお金は、要介護状態(保険事故)にあった本人に対して使われるものであり、家族のためのものではありません。これが法律によって規定されている以上、介護保険制度の枠内で、家族のケアを行うことは、法律違反にもなります。

さらに、介護福祉に関わる専門職(ヘルパー、ケアマネなど)は、介護においては本人が主体という教育を受けています。たしかに、彼/彼女らの養成カリキュラムには「介護家族の理解」という学習領域もあります。しかし、家族は、あくまでも本人の現状や将来予測のために必要な情報を提供する存在として考えられている面が強いのです。

もちろん、専門職は、家族の想いを大事にしたり、本人との関係性に介入することの重要性も学んでいます。それでもやはり、介護の専門職の教育においては、本人が主体というところが軸になっているのです。

既存の介護保険制度では、家族が軽視されてしまっているからこそ

今の介護の専門職は、法律で定められた既存の介護保険制度を前提として、その制度を支える人材として教育されています。ですから、こうした介護の専門職に対して、家族もケアしてほしいと願うことや、要介護者ではなくて、家族の要望のみを聞き入れてくれるようにお願いすることは難しいということです。

そかし、それでは、介護をする家族は疲弊していくばかりです。だからこそ、家族を支援する法律(介護者支援法)の整備と制度設計を急がないとならないのです。私たちが、そのための公約を掲げる政党・政治家を応援したり、その活動の主体となっていくことも必要です。

繰り返しになりますが、既存の介護保険制度の中では、介護をする家族を支援することはできません。その結果として、介護をめぐる殺人虐待が起こってしまっているという事実は非常に重いと言わざるをえません。遅くとも2025年までには、介護をする家族を支援するための社会システムを構築しないとならないのです。

※参考文献
・三菱UFJリサーチ&コンサルティング, 『<地域包括ケア研究会>地域包括ケアシステムと地域マネジメント」(地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業)』, 平成27年度厚生労働省老人保健健康増進等事業, 2016年

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