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「後医は名医」という言葉を知っていますか?(患者として気をつけたいこと)

後医は名医

「後医は名医(こういはめいい)」を考察する

医療業界において有名な言葉に「後医は名医(こういはめいい)」というものがあります。患者が具合が悪くなったときに訪れた病院で、はじめに出会う医師が前医(ぜんい)と言います。ここでなんらかの診断がくだされて、別の医師を紹介され、そこで出会う医師を後医(こうい)と言います。

このとき、患者からすれば、後に出会う医師のほうが、優れた医師のように感じられるのが普通です。しかし、このときの感じというのは、正しくありません。この、患者が一般的に得やすい間違った認識を、医療業界では特に「後医は名医」という言葉で、注意喚起しています。

実は、後医は前医よりも3つの点で優位な立場にあります。それは(1)後医は前医から患者に関する多くの情報を得ている=情報優位性(2)後医は前医よりも病気が治癒するタイミングに近い=タイミング優位性(3)後医は前医の医療方針について意見を言える=立場優位性、の3つです。

優位性1. 後医は前医よりも多くの情報を持つ

前医は、患者を最初に診療する存在です。まず、患者の情報が事実上ゼロというところから、様々な情報を聞き出します。その上で、必要な検査などを行い、病気に関する情報を整えます。ここで、明らかになった病気が自分の専門ではない場合、その専門性を持った後医を紹介します。このとき後医は、前医が取得した情報を持った上で、診療をスタートしています。また、その病気は、自分の専門分野であることが多いため、より適切な処置を、自信を持って行えます。後医は前医よりも圧倒的な情報優位性を持っているのが普通なのです。

優位性2. 後医のほうが治癒のタイミングに近い

具合が悪くなってから、まず会うのが前医です。前医の診察を受けて紹介されるのが後医です。その後は後医とやりとりをしながら、病気は快方に向かっていきます。このとき、後医のほうが病気が治癒するタイミングに近いため、患者としては後医に対して良いイメージを持ちやすいのです。これに対して前医は、ちょっとの診察で自分の前から姿を消したように思え、悪いイメージが付いてしまうことがあります。しかし現実には、前医も後医も、チームで医療を行っており、それぞれが必要な存在です。

優位性3. 後医だけが前医を批判できる立場にある

後医のところで診察を受けていると、後医が前医の医療方針(検査や薬の処方など)について文句を言うことがあるでしょう。これは、医療業界では、医師の信頼を損なう行為として倫理上禁止されているのですが、現実にはよくあることです(だからこそ禁止が言及されているわけです)。後医としては、前医のことを悪く言うことで、自分の権威を誇示できると思っているのかもしれません。しかしこのとき、文句を言えるのは後医から前医に対してだけであり、その逆は不可能であるという点には注意が必要です。顧客である患者に対して、同僚である医師の悪口を言うような医師は信頼できません。医師に限らず、他者をさげすむことで、自分を優位に見せようとする人には近づかないほうがよいのと同じことです。

「後医は名医」のワナにはまらないための注意

ここまでの話で、前医も後医も、どちらも大切な存在であることが理解できたと思います。この背景を前提として「後医は名医」のワナにはまってしまわないように、以下、いくつか注意点をまとめておきたいと思います。

注意1. セカンド・オピニオンが欲しくて後医にかかるとき

今、お世話になっている医師(前医)の診察に疑問があり、別の医師(後医)の意見(セカンド・オピニオン)が欲しいということがあるでしょう。医師にも様々な人がいますから、セカンド・オピニオンをもらうこと自体は有益な場合も多いと思われます。このとき、少なからぬ患者が「前医にとって失礼になるから」という理由で、後医に会っていることを前医には隠したいという気持ちを持つようです。しかし後医にとっては前医がどこの病院の誰で、どのような診察と治療がなされ、どういった薬を処方されているのかといった一連の情報を持つことは、そもそも後医としての仕事をするために必要なことです。

注意2. 前医の批判をする医師には注意する

医療業界では古くから「前医の批判をすべからず」という教育が実施されています(日本医師会:医の倫理綱領注釈)。こうした教育にもかかわらず、それを無視して前医の批判をするような医師には、注意したほうがよいでしょう。患者は、病苦の影響で不安な気持ちでいますから、こうした批判をする後医の意見も聞きたくなるかもしれません。しかし、そのようにして、患者を自分に依存させることが、このような後医の狙いである危険性さえあります。こうして不安が煽られてしまうと、次々と医師を変える状態(ドクター・ショッピング)に至ってしまうこともあります。

注意3. 安易に後医に頼らないほうが良いケースもある

なかなか病状が良くならないとき、患者としては「医師が悪いのではないか?」と思ってしまうことがあります。しかし、効果のなかった治療もまた、医師にとって、大切な情報なのです。様々な治療を試すことは、医師にとって、経過観察です。特に難しい病気の場合は、医師は、経過観察をしながら、少しずつ病気の原因をつきとめようとしているわけです。この過程で、安易に医師を変えてしまうと、この経過観察が途切れてしまい、かえって悪い結果につながることもあります。そもそも、病気が重いものである場合、病状はそんなに簡単に良くなりません。また、そうした重い病気を軽々と治せる医師など存在しません。

※参考文献
・岩田 健太郎, 『ジェネシャリスト宣言(第25回)』, 週刊医学界新聞, 2015年7月6日(第3132号)
・日本医師会, 『医師の職業倫理指針』, 平成16年2月

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