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我慢することを前提としている部活動の文化が、介護の負担を増大させている?

我慢することを前提としている部活動の文化が、介護を難しくさせている

日本の部活動はやりすぎか?

学校の部活動における顧問の先生の負担を減らそうという動きが起きています。文部科学省は、1997年に中学・高校の部活動に対して、それぞれ週2日と週1日の休みを設けるという目標を示しました。練習時間についても、平日は2~3時間、土日は3~4時間以内という指針が設定されています。

しかし残念ながら、こうした目標や指針は、守られているとは言えません。もちろん、強豪校の中には、練習時間を徹底的に短くして、短時間集中で結果を出すということを実践しているチームもあることは事実です。

ただ、練習時間が、良い結果につながることは否めません。それは身体面や技術面だけでなく、精神的な部分においても言えることです。「あれだけ辛い練習を乗り切ったのだから、必ず勝てる」と考えられるレベルに到達するには、それなりの時間が必要だからです。

このように、一つのことに本気で取り組んだ経験自体は、それが成功しなかったとしても、子供たちの将来とって間違いなくプラスになるものでしょう。ですから、部活動の時間が長いということは、単純にダメなこととは言えません。

とはいえ、こうした状況をただ肯定していては、先生の負担が減ることはありません。本当は顧問をやりたくないと思っている先生も、たくさん存在しているのが現状です。また、やりたい気持ちはあるけれど、身体がもたないという先生もたくさんいます。

部活動で負担を抱えるのは先生だけではない

土日も行われている部活動が抱える問題は、先生の負担だけではありません。この少ない休みは、やはり、子供たちの身体にも影響を及ぼしています。島根県の「身体教育医学研究所うんなん」の研究チームの発表によれば、部活動を実施する時間が長ければ長いほど、子供たちが肩や腰、膝などに痛みを抱えてしまうそうです。

この研究は、島根市内の中高生2,403人を対象に行われました。島根市内では、運動部に所属している生徒の約3分の1が週に18時間以上の運動をしています。スポーツ活動時間と痛みの関連について詳細の分析を行うと、活動時間の長い生徒では42%が痛みを抱えています。一方、運動部に所属していない生徒で、痛みを抱えているものは20%でした。長時間の運動をしているほうが、2倍も痛みを感じているということです。

また運動時間の長い生徒では、一年後に新たな痛みを発症する傾向が高くなることもわかりました。おそらく痛い部分をかばって動いているうちに、身体のバランスが崩れ、また別の個所にも痛みが出てしまうということでしょう。さらに青少年期に体の痛みを持つことは、成人してから腰痛などを発症するリスクが高まることも指摘されています。

日本の部活動という文化が生み出すもの

ここまで見てきたように、長時間にわたる部活動は、将来的にも子供たちの身体に影響を及ぼす可能性があります。ですから、運動時間の適正化について、検討していかなければなりません。しかし、それだけでは不十分です。土日に活動することが、暗黙の了解になっている現状も変えていかなければなりません。

子供たちが痛みを我慢してでも、その競技を続けているのは、結果を出すために必要なことかもしれません。しかし、その我慢は「何かを犠牲にしてでも結果を出すことを目指す』という精神を育ててしまう可能性を秘めています。

その中で育ってきた子供たちは、ゆくゆくは社会に出て、我慢をして身を粉にして働き、それを周囲にも強要してしまうでしょう。日本人の労働時間は、諸外国に比べても非常に長いと言われています。それに見合った成果があがっているうちは気になりませんが、今は、そうもいかない時代です。

介護は誰かの我慢の上にしか成り立たないのか?

現在の介護は、家族の大きな我慢の上に成り立っています。恐ろしいのは「我慢をして介護をするのは当たり前」という認識そのものです。諸外国における介護は、そもそも家族の我慢を前提としていません。

日本人は我慢強い民族ですし、それは素晴らしいことでもあります。しかし、周囲に助けを求めることは恥ずかしいことではありません。誰かの我慢の上に成り立っている幸せや成功は長続きしません。

日本の部活動のありかたについて、あらためて議論を重ねていくことは、介護の環境改善にもつながると思うのです。まずは自分を大事にしたうえで、相手のことを思いやり、さらに社会のことを思いやれるような環境づくり、人間作りを、学校の部活動にこそ期待したいものです。

※島根日日新聞, 『長時間の運動 痛みのリスクに』, 2016年4月14日
※毎日新聞, 『部活顧問の負担調査 生徒のケガ分析も 全国で17年度』, 2016年6月4日
※毎日新聞, 『うつ病など休職教員5045人 続く高止まり』, 2015年12月26日

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