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介護をする親の姿は、子供の人生観に大きな影響を与える。子育てという視点から、介護を考えてみる。

期待値管理(エクスペクテーション・マネジメント)

「1.57ショック」以降もとまらない少子化

日本の少子高齢化はどんどん進んでいます。かつては、1947年から1949年にかけて出生数が増加する第1次ベビーブーム(団塊の世代)が起きました。現在、その時期に生まれた世代は70歳を迎えようとしています。そして、その子供にあたる世代が、20数年後に生まれています。1971年から1974年あたりが第二次ベビーブーム(団塊ジュニア)と言われます。現在45歳前後の人々がこの世代です。

人口を維持するためには、合計特殊出生率(一生のうちに一人の女性が何人子供を産むか)が2.1を超えていなければならないと言われています。しかし、ベビーブームが終わった後、その数はどんどん下回っていき、1990年には「1.57ショック」を迎えます。

「1.57ショック」というのは、前年(1989)の特殊出生率が1.57となったことからつけられている名前です。1966年に「ひのえうま」という特殊要因で、出生率が1.58まで下がってしまったことがありましたが、それを下回る過去最低の数字を出してしまったということで、この名前がついたそうです。

政府は、出生率の低下と子供の数が減っていることを問題として受け止め、仕事と子育ての両立ができるような環境づくりに取り組みました。1994年に決まった、子育て支援のための施策を「エンゼルプラン」といいます。保育所を増やすことや、延長保育などの充実、あるいは地域子育て支援センターの整備が進められました。しかし、20年以上経った今も、この問題は続いています。というよりむしろ、問題は大きくなっているように思います。

65歳でリタイアの時代は終わりを迎える

日本では、1995年をピークに生産年齢人口(15歳から65歳)が減り始め、2008年には総人口も減少し始めました。国勢調査によれば、2010年で1.28億人いた人口は、2030年には1.16億人、2060年には約8,600万人まで減るとみられています。2010年から2060年の50年間で、日本の人口は31.7%も減少するのです。

さらに生産年齢人口(生産活動の中核をなす15歳以上65歳未満の人口)だけで見れば、2060年には約4,400万人しかいなくなります。人口が8,600万人なので、働ける人が2人に1人しかいなくなるのです。この数字だけを見ても、65歳まで働けばいい、という時代が終わっているのは間違いありません。先にも記事にしている通り、老後の生活にかかる生活費が足りていないことを考えれば、動けるうちは一生働き続けるのが当たり前の世の中になります。

もちろんこれは、今まで通り人口が減り続けたらという仮定での話です。ただ、医療の世界でイノベーションが起こり、誰も亡くならないような社会が生まれない限りは、人口の推移の予測が大きく外れることはありません。人が亡くならないことは一見いいことですが、それによってどんな世界が生まれるのかは、しっかりと想像を膨らませてみることも大事です。

思春期の子供たちは介護を負のイメージでとらえている

子供の数が減り、高齢者の数が増えていることは、思春期の子供たちに様々な影響を与えています。10歳から大学生までの思春期の子供725人を対象にした調査によれば、思春期の子供たちは、少子高齢化社会を負のイメージでとらえています。

少子化が進むと、一人っ子の割合も増えていきます。妹や弟がいないということは、小さい時に赤ちゃんの世話をしたことがないということです。赤ちゃんの世話をしたことがない子供は、育児不安を持つことが多いそうです(これは、子供を欲しくないと考える原因にもなります)。

介護のキーマンである母親の負担に、子供たちは敏感になります。専業主婦として介護を一手に担っている母親が、身体的にも精神的にも苦しんでいるのは子供にもわかります。それが配偶者の親の介護であればなおさらです。

また、母親と比べると「父親が介護を手伝っていない」というふうに見えてしまうことも多いようです。子供たちはそれに対して腹立たしさを感じます。女子であれば、将来の自分の姿を母親に重ね、結婚や家族を持つことに対して、負のイメージを持っても仕方ありません。

介護が女性の仕事と決めつけられてしまっていることにも、子供たちには負のイメージでとらえられています。母親が本当は働きたいのに、自分の意志に反して仕事を辞めてしまった場合は「犠牲になっていて可愛そう」という印象も与えます。これも子供の結婚観や家族観に負の影響を与えるでしょう。

また、介護をしてくれている母親に対して、介護を受けている親(子供にとっては祖父母)からの感謝の表現があまりないことも、子供たちの介護に対するイメージを悪くしています。自分は介護する側にも、される側にもなりたくないという感情が生まれてしまうようです。

介護者がいる生活に対しては「病人中心の生活で嫌だった」と答えている子供もいます。もちろん、頭では仕方ないことだとわかっていても、親の愛情がほしい思春期に、介護に親を取られてしまったという気持ちにもなるのでしょう。「今はおばあちゃんのお世話をしているから」といって、遊んでもらえなかった時の寂しさは、大人になっても消えずに残りやすいのかもしれません。

介護をする親の姿が、子供の人生観に影響を与える

これから、要介護状態になってしまう人は、どんどん増えていきます。過ぎてしまったことは仕方ありませんが、自分が介護者(家族)として、要介護者とどんな関わり方をしているかは、子供は敏感に感じ取っています。これが一人っ子であれば、なおさらです。そしてそれは、子供の結婚観、家族観に大きく影響しています。

ここで、親として子供にどのような姿をみせるのかによって、いざ、自分が介護される番になったときの、介護のありかたも大きく変わるでしょう。自分の親への関わりかたが、そのまま、子供が親である自分の介護をするときの姿にもなるでしょう(当然、バラツキもあるでしょうが)。

介護は、非常に辛いものです。だからこそ、その辛さをそのまま伝えてしまえば、子供は家族とともに生きる人生そのものに前向きになれなくなります。辛くてもなお、介護から逃げない心理的な背景などについても、子供と話し合っておく必要があるはずです。

※参考文献
・総務省, 『平成27年度版情報通信白書,第2部,第1節我が国経済の将来課題とICT』, 2015年
・内閣府, 『平成19年版少子化社会白書,第2章少子化対策の取組』, 2008年
・和田 由香, et al., 『少子高齢化社会に対する思春期の意識調査』, つくば国際短期大学紀要32, 103-112, 2004-08
・笹川 拓也, 『地域社会における子育て支援の現状と課題-子育て支援制度の変遷と子育て家庭の現状について-』, 川崎医療短期大学紀要34号, 13-18, 2014-10

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