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留置所の警察官が介護研修?増え続ける高齢者による犯罪とその対策

留置所の警察官が介護研修

留置所の警察官向けに介護研修?

青森県内の警察署にある留置所で、介護研修会が開かれたそうです(デーリー東北新聞, 2016年5月25日)。対象となったのは、留置を担当する警察官約35名で、介護のプロから、要介護者に対する歩行補助や入浴、排せつ時の注意点などを学びました。

記事によると、2015年の青森県内の警察署留置者は751人で、このうち60歳以上は132人いたそうです。これは全体の約2割を占めています。最高齢は86歳の男性でした。留置施設は刑務所と違い、逮捕された容疑者が一時的に収容される施設なので、そこまで長期の収容にはなりません。それでも拘留期間が20日前後におよぶ場合もあります。

注意したいのは、留置所にいるからと言って、必ずしも犯罪者とは限らないという点です。あくまでも、なんらかの事件の犯人として疑われ、逮捕されている人が入れられるのが留置所です。有罪判決が下るまでは、推定無罪です。よって留置所は、刑務所などの刑事施設(法務省管轄)とは異なり、警察の管理下にあります。

留置所には、容疑者の自殺などを防ぐため、手すりや歩行補助器具などが置かれていません。また留置所は原則として、警察官以外の立ち入りが許されていません。つまり、留置者に介護が必要な場合でも、プロの介護職に介護を依頼することができないのです。

結果的に、警察官が24時間態勢で留置者の日常生活をサポートしなければならない状況が生まれています。同時に、警察官になるための訓練カリキュラムには、介護の専門的な学習は(今のところは)含まれていないのです。

増え続ける高齢者の犯罪

犯罪白書によれば、刑法犯の数は2002年に約128万人を記録したあと、少しずつ減ってきています。2014年には、約80万人になりました。しかし、刑法犯の全体に占める65歳以上の割合はどんどん増え続けています。

現実に、刑法犯のうち約15万人(18.8%)が65歳以上の高齢者です。他の年齢分布と比べると、20歳未満の19.4%に続き、2番目に多くなっています。成人の中ではもっとも多いのが高齢者による犯罪なのです。高齢者の検挙数も、20年前の約4倍に増えています。

高齢者の犯罪の内容の内訳をみると、もっとも多いのは万引きで、全体の31.8%を占めています。その他の窃盗も合わせると、52.2%にのぼります。高齢者の犯罪のほとんどが窃盗だということです。特に、女性高齢者に限ってみれば、犯罪の92.6%が窃盗です。

犯罪の背景には生活苦や認知症などがある可能性も

窃盗を犯した理由については、犯罪白書に書かれていません。しかし、その一因としては、生活苦があると思われます。以前にも記事にしていますが、下流老人などという言葉も聞かれるように、高齢者の生活は決して楽ではありません。

また窃盗が犯罪であることに変わりはありませんが、認知症の影響も考えられます。厚生労働省によると、高齢者の認知症患者数は、5年前で約462万人にのぼります。さらに推計では、2025年には700万人を超えるとされています。つまり、高齢者の5人に1人が認知症という時代になります。

認知症患者が検挙され、留置されることになれば、警察官にはまた大きな負担がかかります。それ以外にも、身体的な介護が必要な高齢者がいる場合や、高齢によるその他の病気を患っている場合も同じです。

今後、高齢者が増え続けることは間違いありません。当然、犯罪に至る前の段階でそれを防ぐことが重要です。しかし残念ながら、高齢者の犯罪は増え続けるでしょう。国として、留置所や刑務所といった施設のバリアフリー化や、専門的なスタッフの配置など、法整備も含めて、対策が必要になりそうです。

※参考文献
・法務省, 『平成27年度版犯罪白書』, 2015年
・デーリー東北新聞, 『進む留置者の高齢化 青森県警で初の介護研修会』, 2016年5月25日
・総務省統計局, 『人口推計(平成26年10月1日現在)』, 2016年4月17日

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