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何歳からが高齢者?人生100年の時代を考える

何歳からが高齢者?人生100年の時代を考える

人生100年の時代に向けて

「65歳から高齢者なんて(呼ぶのは)やめよう」という提言が話題になっています。今年の春に行われた農林水産大臣を中心とした若手議員の委員会で発せられたものです。「人生100年という時代を迎えようとしている中、今の基本的な枠組みでは社会保障が持たない」という危機感が背景にあります。

戦時中40年(歳)台だった日本の平均寿命は、1950年ごろには60年を超えました。戦後の復興により、乳幼児の死亡率が改善されたからです。戦争が終わり、栄養状態、衛生状態が一気に改善された結果です。

そこから半世紀が過ぎ、生活水準の向上、医療技術等の目覚ましい発展により、いまや平均寿命は90年を超えようとしています。これは、世界と比べてもかなり高い数字です。中高年の死亡率も、圧倒的に改善されました。

1950年頃まで日本人の死因は1位が結核、2位が肺炎でした。つまりトップが感染症だったのです。現在では、いわゆる三大疾病(がん、心臓病、脳卒中)がトップを占めています。こちらは、生活習慣病です。「治癒か死か」という時代は終わり「簡単には死なないけれど、完治もしない」という時代に変わってきたのです。

日本において65歳は高齢者なのか?

そもそも高齢者とはなんでしょう。国際連合は、60歳以上の人を高齢者、WHO(国際保健機関)は65歳以上の人を高齢者と定義しています。日本では、以前は60歳で定年退職することが一般的でしたが、現在では65歳定年が増えてきています。

年金がもらえる年齢も、少しずつ先延ばしになっている状況です。「高齢者の医療の確保に関する法律」では、65~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と位置付けています。先にも述べたように、日本の平均寿命は、世界トップクラスです。

世界中を見渡せば、平均寿命が40年前後の国がまだまだたくさんあります。この数字は、日本の戦争前と同じ水準です。こうした平均寿命が短い国としては、シエラレオネ、エチオピア、ザンビアなど、アフリカ諸国が多くなっています。このような国々では、65歳は高齢者と考えられるかもしれません。

しかし、平均寿命が90年を越えようとする日本において、65歳の人を高齢者とするのは、無理があります。実際に、周りを見渡してみれば明らかなとおり、65歳を超えても現役バリバリの人も多数います。65歳を超えていても、趣味やスポーツに精を出している元気な人も、たくさんいるでしょう。

坂の上の「雲」ならぬ、坂の上の「坂」

杉並区立の中学校で、民間出身初の校長になった藤原和博氏の著書に『坂の上の坂』という本があります。いうまでもなく、司馬遼太郎の『坂の上の雲』という作品のタイトルをパロディーにしているものです。

明治時代の人たちには、山頂にビジョンや夢といった雲がありました。頂上の40代に向けて山を登り、あるいは走り抜き、そこで一仕事をなし得たところで、人生の終わりを迎えることができた時代があったのです。

しかしながら、現在は違います。20年学習して、40年働いて、あとはゆっくりするという時代ではありません。藤原氏の言葉を借りれば「一つの仕事だけでは生ききれない(死にきれない)」時代なのです。

60の山を登り切ったあとの30年はどこに向かうのでしょう。65歳くらいまでの山を上る途中に、次の山を登る準備を始めておく必要があります。この山登りのルートが多ければ多いほど、たくさんの山の頂点を目指して、充実した人生を送ることができるでしょう。

若手議員の提言には「働く意向を持つ人への就労サポートを通じて、健康寿命が延びていくようにする。自立できる人の自助を評価・応援し、健康であることに適切なインセンティブを用意する」との考えが示されています。

65歳を定年、その後を余暇と考えるような時代は終わりました。できるだけ長く元気に行動できるような社会に向けて、高齢者という言葉の概念を、少しずつ変えていかないとならないのです。

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