閉じる

子供のいる世帯の所得格差、日本がワースト8位(ニュースを考える)

子供のいる世帯の所得格差

子供たちの経済格差

ユニセフ(国連児童基金)が『子供たちのための公平性:先進諸国における子供たちの幸福度の格差に関する順位表』を発表しました(2016年4月14日)。この報告によると、日本における子供のいる世帯の所得格差は、経済協力開発機構(OECD)や欧州連合(EU)に加盟する先進41カ国の中で8番目に大きいという不名誉な結果でした。

日本では、最も所得の低い子育て世帯(所得が下から10%)の所得は、所得が中程度の子育て世帯の約40%にすぎません、これは、一般的な子育て世帯の所得の半分にも満たないという状態です。本レポートの日本語版にて解説を担当した首都大学東京の阿部彩教授の推計によれば、下位10%の年収は、2012年の時点で約84万円しかありません。

子供は、生まれてくる家を選べません。その意味でも、国全体の経済力を高めつつも、経済格差をできるだけ小さなものにしていかないとなりません。しかし、世界の先進国と比較した場合、日本はそれに失敗しているのです。

子供たちの学力格差

学力についても見てみましょう。これまでの研究では、日本の学力ランキングは世界の中で極めて高いとされてきました。調査によっては(たとえば『イノチェンティレポートカード11』)、日本の子供は、教育分野の指標では1位の成績を収めています。

今回のユニセフのレポートでは、学力到達度において 下位10%の子供と、中位の子供の学力の差も調査されています。平均的な子供の学力だけではなく、一番学力が低い子どもたちが、標準的な子供に比べてどれほど低いのかを見ていることになります。

この指標で見ると、37カ国中、日本は下から11番目となり、決してよいランキングとは言えないことがわかります。もちろんこの背景には、日本いにおける平均的に高い学力もあるでしょうが、標準的な子供に比べて、大きく学力が乖離した子供たちが存在していることは事実です。

経済格差が少子化につながっている

子供たちの学力が、両親の所得(世帯年収)に大きく影響されることは、すでに多くの研究者が述べてきた通りです。経済的余裕があれば、塾や習い事のような教育支出も多く出せます。また家庭内における教育力も、世帯の年収に大いに関係すると考えられています。

文部科学省の調査によると、幼稚園から大学まで、すべて公立でまかなった場合の教育費は774万円、逆にすべて私立に通った場合は2,238万円もかかるそうです。私立の場合、単純に幼稚園から大学までの18年で割っても、年間約125万円はかかる計算です。

ちなみに、都内で私立大学の医学部(医学科)に進学した場合、最も安いところでも6年間で約2,000万円の学費がかかります。これはあくまでも教育費だけです。ここに生活費等を含めれば、さらに費用がかかります。私立の医学部は極端な例かもしれませんが、これが、誰でも受けられる教育でないことは明らかでしょう。

少し古いデータではありますが、国立社会保障・人口問題研究所が2010年に行った『第14回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査』によれば、理想の子供数を持たない理由について、多くの夫婦が「子育てにお金がかかりすぎるから(60.4%)」と回答しています。

これに続いて「高年齢で産むのがいやだから(35.1%)」「ほしくてもできないから(19.3%)」といった回答が上がっていますが、一つ目とは大きく差が開いています。また「ほしくてもできないから」というところには、不妊治療の治療費の問題があることも考えれば、少子化の一番のネックは経済的な理由なのです。

充実した介護のためにも、求められる施策とは?

現在、家庭にのしかかっている教育費の負担を軽減することができれば、子育ての不安要因が取り除かれるでしょう。そうなれば、夫婦当たりの出生数の増加が期待できるかもしれません。

特に、最も貧しい世帯の子供たちに、平等に教育の機会を与えられるような環境整備が急務でしょう。そして、これらの教育の充実によってもたらされる出生率と生産性の向上による日本の労働力の改善が、日本の経済成長、そして社会福祉の向上につながります。

さらに近年は、同居家族による介護が減少し、介護事業者と別居家族による介護が増加しています。要するに「一人暮らし」の増加が目立ってきているのです。日本の世帯数は、2020年以降、すべての都道府県で「一人暮らし」が最多となります。また、世帯主の年齢65歳以上というケースでは、その4割近くが「一人暮らし」になると見込まれています。

家族によるサポートが受けにくくなってきている今、介護事業者の労働力となる介護人材の確保は非常に重要です。そして将来の介護人材とは、現在の子供にほかなりません。介護の未来のためにも、なんとか経済格差による教育格差の発生を抑え、より子供が生まれ、よりよい教育が受けられる環境を整備していくことが必要です。

※参考文献
・ユニセフ, 『子供たちのための公平性:先進諸国における子供たちの幸福度の格差に関する順位表』, 2016年4月14日
・国立社会保障・人口問題研究所, 『第14回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査』

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

PR