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介護福祉士の養成学校が定員割れ(定員の50%)という事実

介護福祉士の養成学校が定員割れ

介護福祉士は足りていないのに、全都道府県で定員割れ

ここ10年、介護業界の有効求人倍率は「2倍」程度で推移しています。しかし大都市圏に限ると、有効求人倍率が「4倍」を超えるケースも増えてきました。これは、大都市圏の介護業界においては「1人あたり4件の求人がある」ということです。

対してここ10年、日本の全業界の有効求人倍率は「1倍」の周りをウロウロするイメージです。日本の他の業界に比べても、介護業界の人材不足がいかに深刻かがわかるでしょう。さらに現在、約180万人が働く介護業界ですが、2025年までに、追加で約80万人が必要とも言われています。

それなのに、介護福祉士(介護の専門職)を養成する学校が定員割れ、しかも定員の半分しか入学者がいないという状況です。これは、私たちの未来です。つまり、いざ、私たち自身に介護が必要になったとき、それを担ってくれる人がいないということです。以下、NHK NEWS WEBの報道(2016年3月29日)より、一部引用します(太字化・改行位置の修正などは KAIGO LAB)。

高齢化が進み介護の現場で働く人材の確保が課題となるなか、介護関連の学校で作る団体が、介護福祉士を育成する全国の専門学校や大学を対象に、今年度の入学者数を調べた結果、定員全体の半数となる合わせて8800人余りにとどまったことが分かりました。調査した団体は「介護現場を担う人材不足がますます進むおそれがある」としています。(中略)

入学者数はこの5年間、減少傾向が続き、定員に対する入学者の割合は、5年前の76%に比べて26ポイント減っています。また、都道府県別ではすべてで定員割れとなっていて、最も低い自治体では入学者の割合が30%だったということです。

介護業界が人材不足になる原因は色々と指摘されています。その中で、もっとも根本的なのは、夜勤もある辛い仕事なのに、手取りで20万円を切るような待遇の悪さです。ここが改善されない限り、こうした養成学校の入学者は増えませんし、結果として、介護業界の人手不足が解消されることはありません。

ちなみに、大学生の就職先としてもっとも人気があるのは公務員です。平均でいうと、公務員の年収は、介護職の年収の2倍程度になります。公務員はリスクも少ない仕事ですから、そこに人気が集まるのも当然と言えるでしょう。

いままでのやり方ではダメ

この状況は、残念ですが、これまで政府と介護業界が実施してきた人材確保の手法が、そもそも間違っている(効果がない)ということを示しています。ここで反省し、やり方を変えないと、ますます厳しいことになっていくでしょう。

おそらく、官僚は、こうしたことを正しく認識しています。日本の官僚は、基本的に優秀なので、状況の把握は間違えていないはずです。それでも、手が打てないでいるのは、財源がないからです。

日本の社会福祉の財源は、2つのことを前提として組まれています。1つめは、国の経済成長から税収が上がり、そこから財源が確保できることです。もう一つは、社会福祉が必要になる人が極端には増えないということです。

この2つの前提が、どちらも崩れています。経済成長は止まり、そこからの税収も増えなくなってきています。そしてなにより、高齢者が激増しており、要介護となる人も急増しているのです。

現在の介護保険の財源は、約10兆円です。これに、自己負担分の1兆円を加えると、介護業界全体の「売り上げ」は約11兆円となります。介護業界には約180万人の人がいますから、一人当たりにすると、約611万円の「売り上げ」になります。ここから諸経費を支払うと、とても、介護職に対して高い報酬を出すことはできない構造になっているのです。

そこに、さらに追加で約80万人の人材を入れると、待遇はかえって悪くなってしまいます。これはもう、考え方を変えないと、対処しきれないのは明白なのです。変わらなければ、状況はもっと酷くなっていきます。

介護が必要でも、介護してもらえない未来は近い

希望と言えるのは、ITや介護ロボットの開発です。それにより、追加の人材なしで、より効率的な介護ができるようになることが大事です。その上で、全体の経済成長は難しくても、国民一人当たりの生産性を高めて税収を向上させることができたら、介護職の待遇は増やせます。

鍵となるのは、介護の現場も、他の仕事の現場も、効率性が圧倒的に高まることです。それを、2025年までに実施できなければ、日本の介護は崩壊してしまいます。崩壊というのは、介護が必要な高齢者がいても、誰もなにもできないという状態になることです。

この段階に至ると、お金持ちは、高い給与を提示して、個別に介護職を雇うようにもなるでしょう。そうなると、お金持ちではない一般の人の場合、介護職が必要な状況になっても、そもそも介護職がいないということになります。

「本当に、そんな状況になるのだろうか?」という疑問を持っている時間は、もう、残されていないのです。ここで変わらなければ、日本は、本当に大変な時代に突入することになります。介護のための財源を確保するために、公務員の総人件費抑制も含めて、聖域なき構造改革を進めるべきです。

※参考文献
・厚生労働省, 『介護人材の確保について』, 福祉人材確保専門委員会, 2014年10月27日
・NHK NEWS WEB, 『介護福祉士育成の学校 27年度入学者は定員の半分』, 2016年3月29日

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