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刑務所からの出所者を介護職に(ニュースを考える)

刑務所の出所者を介護職に?

刑務所からの出所者が介護業界に「重点的に」紹介される

まず、注意したいのは、過去に犯罪を犯してしまい、刑務所で刑期を終えているからとって、差別されるべきではありません。これを綺麗事にしてしまわないためには、どうしても、再犯が起こらないような社会環境の研究と整備が必要です。

軽犯罪・重犯罪、初犯・再犯では意味が全く異なりますし、より深い議論が必要なところです。そうした中、法務省が、刑期を終えた出所者を、建設業界と介護業界に、今年の秋から「重点的に」紹介していくという報道がありました。以下、日経新聞の記事(2016年3月22日)から、一部を引用します。

法務省は刑期が終わった出所者がすぐに働けるよう、人手不足の企業に仲介する拠点を4月に立ち上げる。全国の出所予定者について保有する資格などの情報を希望する企業に紹介する。特に人手不足が深刻な建設、介護分野の技術訓練に力を入れている。出所後すぐに働けるようにして再犯を防ぐ効果もねらう。(中略)

全国77カ所の刑務所・拘置所と52カ所の少年院で出所予定者の保有資格や刑務所で取得した資格、居住予定地、希望職種などを集める。2014年の出所者は刑務所から約2万5000人、少年院からは約3000人。ハローワークなどで就職口を探すが、東京や関西での就労希望が多く、地方のハローワークでは対応しにくかった。

「孤独(社会的孤立)」が避けられるような環境整備が必要

刑務所で更生し、資格を取得し、再出発を考えている真面目な人材であれば、基本的人権を尊重し、社会として受け入れる必要があります。特に日本は、いちど罪を犯した人材に厳しすぎるところがあります。ですが、そもそも労働人口が極端に減っていく今後は、この点についてより柔軟になっていくことも大事なことでしょう。

ここで、出所者が、社会の中で更生していくことの敵になるのは「孤独(社会的孤立)」であることが多数指摘されている点には注意が必要です。出所して入った社会環境(勤務先など)で「孤独」になってしまったら「自分は、受け入れられない」と感じ、自分を大切にしなくなり、更生の大きな妨げになるからです。

そして介護業界は、シフトを組んで、1人の介護職が複数の要介護者(利用者)を相手にすることから、同僚との付き合いが極端に少ない(報告書を通したコミュニケーションが多い)業界です。職種にもよるのは当然ですが、仕事の中に、どうしても「孤独」があるのが介護業界なのです。

いや、複数の要介護者と接するのだから「孤独」ではないという意見もありえます。しかし、介護業界にとって要介護者は顧客でもあります。顧客との接触だけで「孤独」から離れられるかというと、それは少し違うようにも思います。ここも、人それぞれではありますが。

もちろん、介護業界は、人材不足に悩んでいるのは事実です。また、介護業界には真の意味で優しい人が多いので、この「孤独」に配慮する環境さえ整えば、出所者を上手に受け入れられるかもしれません。さらに、介護業界には他者の役に立てる仕事が多くありますから、更生にも良い環境を整備できる可能性もあります。

ただ、こうした理想を実現するためには、介護業界全体として、出所者とどのように仕事を進めていくべきか、何に注意していくべきか、よく議論し考えられたガイドラインが必要ではないでしょうか。

確かに「今の介護業界にそれだけの余裕があるか」と問われると苦しいです。昨年は、多くの倒産(過去最多)を出してしまった業界でもあります。しかし、なし崩し的な対応をしてうまく行くほど、簡単な課題ではないと感じます。

皆様は、どう思いますか?

※参考文献
・日本経済新聞, 『人手不足企業に出所者仲介 法務省、建設・介護に重点』, 2016年3月22日
・魚谷瑞紀, 『累犯高齢者はなぜ増え続けているのか ―再犯防止には何が必要なのか―』, 早稲田大学文化構想学部現代人間論系, 2013年度
・古川隆司, 『犯罪者の孤独と生活世界』, 追手門学院大学社会学部紀要(第3号), 2009年

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