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看取りの介護報酬が増額される – 医療従事者が言いにくいこと

看取りの介護報酬が増額される - 医療従事者が言いにくいこと
気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。

自宅で最後を迎えたいという高齢者が過半数

住み慣れた自宅で最後を迎えたいという高齢者は、全体の54.6%と最多です。次に、病院などの医療施設が27.7%になっています(厚生労働省, 2013年)。しかし、実際の死亡場所に関する統計では、病院が78.4%(厚生労働省, 2011年)となっており、多くの高齢者が、自分の希望とは異なる場で最後の瞬間を迎えています。

ここには「医療従事者は言いにくいこと」があります。それは、終末期の患者には、多くの医療費がかかるのですが、本当の意味で治療になっていることはあまりないということです。本来であれば、治療によって命を救うのが医療従事者の使命ですから、ここには大きな問題が隠れています。

そうした中、厚生労働省が、来年4月の介護報酬の改定に向けて、動きました。以下、NHK NEWS WEBの記事(2017年11月11日)より、一部引用します(改行位置のみ、KAIGO LAB にて修正)。

(前略)厚生労働省は来年4月の介護報酬の改定に向けて、高齢者が病院ではなく住み慣れた自宅や介護施設で最期を迎えられる「みとり」を重視する方向で議論を進めています。

その結果、特別養護老人ホームで医療体制を充実させ、入居者を病院に搬送することなく施設の中でみとりを行った場合の介護報酬を増額する方針を固めました。

また夜間などに入居者の容体が急変しても、施設内で治療が受けられるよう、地域の病院と連携して24時間いつでも医師を派遣してもらえる体制を整えた場合も加算の対象となります。(後略)

一般の報道では欠けている視点

先の報道では「医療従事者は言いにくいこと」についての指摘がありません。今後も、ここについて言及する報道は少ないはずです。しかし、その背景には大きなリスクもあるため、KAIGO LAB としては、もう一歩だけ突っ込んでおきます。

これからの日本に起ころうとしていることは、トリアージ的な対応です。トリアージ(Triage)とは、主に災害時に、重症度や緊急度によって負傷者を分類した上で、治療や搬送の優先順位を決めることです。日本の場合、この優先順位は、以下のような4段階で示されます(参考:横須賀市医師会HP)。

順位
分類
状態
第1順位 最優先治療群(重症群) ・直ちに処置を行えば、救命が可能な者
第2順位 非緊急治療群(中等症群) ・多少治療の時間が遅れても生命には危険がない者
・基本的には、バイタルサインが安定している者
第3順位 軽処置群(軽症群) ・上記以外の軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としない者
第4順位 不処置群(死亡群) ・既に死亡している者又は直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能な者

医療従事者としては、本当は、すべての患者に全力で関わりたいのです。しかし、限られた医療リソースに対して、多くの患者が生まれてしまう場合、こうした優先順位付けが必要になってしまうのは、けっして誰も認めたくありませんが、事実です。

そして、こうしたトリアージは、災害時に限ったものではありません。超高齢化社会とは、多死社会でもあります。これは、限られた医療リソースに対して、延命治療が困難な患者(第4順位)が多数生まれる社会であることを意味しています。

隠れている恐ろしい問題について

今回の、厚生労働省による看取りの介護報酬の増額とは、実質的には、介護現場においてトリアージを行うということに他なりません。しかし、トリアージにおいては、第1順位と第4順位の見極めが必要であり、ここを見誤ると、本当に恐ろしい結果になります。

医師とはいえ、トリアージの適切な経験(訓練)がなければ、いきなり不安なくトリアージができるものでもありません。だからこそ、今回の改正においては、介護現場でトリアージを任されることになる医師の経験(訓練)が欠かせないものになるはずです。

もちろん、すでに、介護現場にいる医師は、こうした判断の経験に長けています。しかし今後、多死社会が進むと、新たにトリアージを任されることになる医師も増えていくことになります。なんとか、医師の経験(訓練)が追いつくことを願うばかりです。

※参考文献
・厚生労働省, 『平成25年版 高齢社会白書(全体版)』, 2013年
・厚生労働省, 『参考資料 死亡場所の推移』, 2011年1月21日
・NHK NEWS WEB, 『住み慣れた施設で最期を「みとり」の介護報酬増額へ』, 2017年11月11日
・横須賀市医師会, 『災害時医療救護活用マニュアル』

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