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【書評1】『人間の死に方 医者だった父の、多くを望まない最期』久坂部羊著, 幻冬舎新書

人間の死に方 医者だった父の、多くを望まない最期 (幻冬舎新書)

本書『人間の死に方 医者だった父の、多くを望まない最期』は、高齢者医療に関わる現役医師であり、小説家でもある著者が、自らの父親を在宅介護した記録です。この父親も医師だったのですが、徹底した医者嫌いというのは驚きです。ある意味「医療の現実を知っているからこそ」なのかもしれません。

著者を中心に、母親と妻とで介護する日常が書かれています。ユーモラスな語り口の中に、介護の苦しみも隠さずに表現されています。老人医療に携わっている医者だけに、老人自身の気持ち、家族の心情、衰えて行く老人に施される医療措置への疑問なども、リアルに記されていて参考になります。

KAIGO LAB取材(T.Mさん、40代会社員)

こんな破天荒な父親に振り回されながら、良く面倒見るなあと感心した。おむつ交換や、便をほじくりだす手順はリアルで、ほんとうにやった人しか書けないなと思った。

これを自分が親父にできるだろうかと考えてしまう。母親が介護に煮詰まって虐待まがいの行動に出たり、なかなか往生しない義父のことを嫁さんが「元気になるかどっちかにしてほしい」と言ったりするところ、介護の現実を思い知らされる。

同居家族が協力してこの大変さ、離れて住む自分の両親がそろそろあぶない今、落ち込みながら読んだが、介護されている本人の「むかしは“親孝行、したいときには親はなし”と言うたもんやが、今は“親孝行、したくないのに親がおり”やな」というせりふに思わず笑ってしまった。

KAIGO LAB取材(K.Aさん、50代公務員)

週4日働きながら、脳梗塞の後遺症で身の周りのことがほとんど出来ない義父を介護しています。私の勤務中はデイケアで過ごしていますが、夜間と休日はほとんど介護に手を取られてしまいます。

夫も出来るだけのことはしてくれますが、深夜帰宅、早朝出勤というハードな生活なので、あまりあてにはできません。義父は気難しく、この本のお父さんのような愛敬もありませんので、私にとって介護は難行苦行です。

でも、この本を読んで、分からないことを言われてイライラするだけでなく、本当は何が言いたいのか、どう感じているのかを想像することが大事なのかなと思いました。そんなゆとりが持てるかどうか自信はありませんが、そう言う見方があると知っているだけで、私も少し変わることができるかもしれません。

一番救われたのは、「死んでほしい」と思うのがあたりまえだというところ。私は、疲れきって「開放されたい、死んでほしい」と思うたびに、罪悪感と自己嫌悪でよけいに疲れていました。

“本人の前で言ってはいけないけれど、口に出していうことでストレス解消になる。建前を優先して本音を押さえ込むと虐待や殺人にまで発展しかねない。”

というところを読んで気持ちが楽になりました。人前で口に出して言うつもりはありませんが、「思ってあたりまえ」と考えられれば、自分を責めることからは開放されます。

この著者に共感したら、さらに読みたい本

日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか (幻冬舎新書)

これは、今回書評として取り上げた『人間の死に方 医者だった父の、多くを望まない最期』から、7年前に出版されたものです。著者の両親は、高齢ながら、まだ元気なときの話です。内容は、不老長寿を無条件に善とする価値観と、それをあおるマスコミへの批判、現在の高齢者医療のあり方、高齢者福祉事業所の実態など、高齢者医療に関わる現役医師にしか知り得ない情報が書かれています。

本人を苦しめることになりかねない延命治療の問題、グループホームの実態、老人保健施設が介護保険をどう使って経営を成り立たせているか、有料老人ホームの問題点なども、かなり生々しく書かれています。

若々しく元気に年齢を重ねたいと思っている高齢者には、辛口過ぎるかもしれません。しかし、親を介護する人には参考になる情報も多いので、こちらもオススメです。

高額な有料老人ホームについて「入居一時金6,250万円、月々の支払いが25万円(中略)家をすべてバリアフリーにして24時間のヘルパーを2人雇ったとしても、おつりがくる(中略)ならホームに入る必要はない」など、記述も、かなり具体的で、参考になります。
 

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