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【書評52】『介護破産』結城康博著, 村田くみ著, KADOKAWA

介護破産
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ショッキングなタイトルです。次々と介護関連の本が出版される中で、まず手にとってもらうためには、インパクトのあるタイトルが必要ということもあるかもしれません。ただ本書の場合は、それよりも、二人の著者が介護の現状に強い危機感を抱いていることを表しているようです。

とにかく本書は、現役世代に「当事者意識」を持つよう訴えています。その背景になっているのは、著者の一人である村田氏自身が新聞社を介護離職し、介護破産の寸前までいった体験を持っているからでしょう。本書の随所で、当事者の視点と危機感が感じられるのはそのためと考えられます。

老いや病、死は、誰にでも必ずやってくるものですが、それについて考えることは避けたいというのが人情です。とはいえ、実際に老いて病を抱えるようになってから対策を講じることは困難です。

もちろん、どうにかなるだろうという楽天的な考え方が、時と場合によっては、大きな力になることもあります。しかし、本書が訴えるとおり、介護の問題は「なんとかなる」ことではなく「なんとかする」しかありません。

サブタイトルは「働きながら介護を続ける方法」です。そのためには、情報蒐集こそが大切だというのが本書の主張です。実例としてあげられている高齢者の厳しい現実は、読んでいて辛くなるようなものです。しかし、望ましい未来図を描くためには、現状を知ること、分析して備えることは欠かせません。

第1章『崖っぷちの日本の高齢者たち』では、年金生活の高齢者の苦境がつぶさにレポートされます。現政権の年金政策の問題も「政府提案の年金減額新ルール」の図を使ってわかりやっすく説明されます。

様々な例を読むと、年金生活者の困窮の度合いは、それぞれの節約などで解消する域を超えています。しかし高齢者は特に、知らされた結果(例えば年金減額)を、泣く泣く受け入れがちで、滅多に声を上げることがありません。

第3章『介護にはいくらかかるのか?』の中では、公益財団法人生命保険文化センターの調査をもとに、具体的な数字を上げています。厚生年金受給者の例として年金受給額が毎月1人平均15万円前後と、1,000万円の貯金があれば(贅沢しない限り)しばらくの間「介護」が必要になってもしのげる、とのことです。

年金、介護の制度は目まぐるしく変わり、世界の経済情勢も変わる中での分析ですので、これで万全ということはできません。とはいえ、こうした具体的な数字があると、将来に備えやすくなります。また、今の自己資産でやっていけるかと不安に思っている高齢者や家族にとっても参考になるでしょう。

「こんなに預貯金などない」と、かえって落ち込む人もいるかもしれません。しかしこれは、あくまでも1つの目安です。足りなければ足りないなりに、本書に紹介されている利用すべき制度や乗り越える方法をフルに活用するしかありません。

生活保護受給の条件も参考になります。(1)現在手持ちのお金がわずか(2)即現金化できる資産(自宅、車、保険など)がない、といったことが条件になりますが、例外もあり、各自治体の社会福祉事務所に確認する必要があります。

生活保護と聞いただけで、拒否反応を示す人も少なからずいます。しかし、これは国民の権利であり、受給することに何ら恥じることはありません。とにかく、困ったらそのまま諦めずに、社会福祉事務所だけでなく地域の民生委員、地域包括センターなどに相談することをお勧めします。

高齢になってからの大きな不安の一つが認知症です。認知症とそれにまつわる問題は第4章『認知症トラブルと家族の責任』でとり上げられています。続けてp146のコラム『財産管理ができなくなったら』では、市区町村の「社会福祉協議会」への相談を進めています。これは、あまり知られていない制度かもしれません。

財産管理のサポートというと、真っ先に、成年後見人が頭に浮かびます。しかし、社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」はその前段階として頼りになります。福祉サービスの相談や契約の代行、公共料金の支払い手続きの代行など、どれも有料ですが、リーズナブルな料金で依頼できます。

事前の話としては「認知症の人は急に何もかもできなくなるわけではない」(p46)ということは、ぜひとも知っておきたいことです。まず、適切な治療を受け生活力を高めれば進行を遅らせることも可能です。物盗られ妄想や夜間の徘徊などの症状が出てきても、適切なケアと医療で改善する可能性がああります。

慣れた店での買い物はできるますが、一人旅は困難な場合が多いとか、食事の支度はできるがビデオ録画の操作はできなくなるような状態といったあたりは、きっと、認知症の理解を助けてくれるでしょう。

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