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【書評51】『介護の仕事には未来がないと考えている人へ』濱田孝一著, 花伝社

介護の仕事には未来がないと考えている人へ
Amazon: 介護の仕事には未来がないと考えている人へ

介護の仕事に対する一般的なイメージはどんなものでしょうか?介護施設やクライアントの自宅での過酷な労働、それに見合わない低賃金、そんな中でも使命感を持って働いている人たちというものでしょう。

仕事の内容については、家事の延長のようなもので、オムツ換えや食事の補助など、特別の知識や技術は必要ないと思っている人が少なくありません。これから介護職を目指そうとする人や、実際に介護スタッフとして働いている人も、これと似たようなイメージを抱いている場合もあります。

しかし著者は、「介護はプロの仕事」であると繰り返し言っています。これは、介護に携わる人に向かってだけではありません。社会に対して、介護が医師などと同等のプロの仕事であることを正確に評価すべきだと訴えています。

介護労働を語るとき、「人に優しい仕事」「排泄の後始末など大変な仕事」などと表面的で感情的な議論になるのは、「介護の専門性」という視点がすっぽりかけているからだ。(p8要旨)

本書は、さまざまな思い込みを排したうえで向かうべき方向を示しています。介護職のための考え方の地図を目指しているようにも読めます。現状をできる限り客観的に分析して、今後の道を示そうとしているからです。

もちろん、こうした地図なしで、正確に目的地にたどり着く、そういう人並みはずれた方向感覚の持ち主もいるでしょう。しかし、ほとんどの人にとって、良い地図は、無駄に迷ったり焦ったりせずに目的地に行くための必需品です。

第1章 介護の仕事に未来はあるのか
第2章 未来は働く事業所で決まる
第3章 市場価値の高いプロになる
第4章 介護サービス管理・介護経営のプロになる
第5章 鼎談 高齢者介護業界の現状と課題

著者は、銀行に勤務した後、介護職員、社会福祉法人マネージャーを経て、2002年に住宅コンサルティング会社を設立している経営者です。現在は、高齢者住宅のコンサルティングを行っています。やはり、実際の経験を踏まえての問題の指摘、アドバイスには説得力があります。

著者が働いた当時は、紙オムツも介助用手袋もなく、1日8回、50人の寝たきり寝かせきりの高齢者のオムツを替えるという状況でした。この20年で介護は大きく進歩していて、当時とは全く違うのに、未だに従前のイメージで語られることも多いと言っています。

資格取得の問題は、現職の人も、これからの人も関心のあるところでしょう。著者は、第3章で、介護の世界は資格取得が基本であるといい、資格の特性と必要性がわかりやすく書かれています。

著者はここで「介護や福祉は資格ではなく経験だ」「資格試験と実際の介護は違う」というありがちな反論に対して、経験は重要だが我流の介護は、専門性の低い独善的な個人の経験でしかない(p95要旨)と警告しています。

資格は、介護を作ってきた無数の先人たちが蓄積した失敗や経験から、重要な知識・技術を抜粋し、そのノウハウを整理、集約したものです。資格取得は、その先人たちの知恵をもっとも効率的に得ることのできる最短・最適な方法なのです。(p96)

本書は、基本的には、プロとして介護の仕事を目指していたり、現在その仕事に悩んでいる人を対象としたものではあります。しかし、介護される人と家族にとっても、参考になる情報がたくさんあります。

介護のプロに「世話になる側」は、どうしても、介護職をその人柄や熱心さで評価してしまいがちです。たとえ疑問に思っても、プロがやることだから…と流してしまうことも多いでしょう。

例えば「ケアマネージャーに不満があれば変えることができる」という知識はあっても、ケアマネージャーが、やるべきことをやってくれているのかどうかの判断は素人にとって難しいものです。一般向けの本などでは、ケアマネージャーはケアプランを立てると言った、ざっくりした説明がほとんどです。

もちろん、介護職やケアマネージャーを、鵜の目鷹の目でチェックしようということではありません。そうではなくて、介護される側も介護のプロとは何かを知ることで、漠然とした不信感を持つことなく、望ましい信頼関係を結んでいけるのではないかということです。

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