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【書評49】『マンガ!認知症の親をもつこどもがいろいろなギモンを専門家に聞きました』永峰英太郎著, 宝島社

マンガ!認知症の親をもつこどもがいろいろなギモンを専門家に聞きました
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ずいぶん長いタイトルですが、まさにタイトル通りの本です。認知症関連の本がたくさん並ぶ中で、シンプルなタイトルではこの本の特色は伝わりにくいでしょう。認知症の専門家である医師に質問する形でまとめられていますが、ベースは「認知症の親をもつこども」が経験した問題や疑問です。

著者は、父親の認知症に気づいてから認知症の本を読みまくった結果「書店に並ぶ認知症の本は、識者目線のものが多く、実際の現場では、あまり役に立たなかった」と言います(p4)。実体験をベースに書かれた本のなかでよく言われることです。

「本に書かれていたことが真実ではないこともありました。よく、『認知症=近い記憶から失われる』と書いてあったりするけど、うちの父は1週間前のことを覚えていることもありました。」(p4)とも言っています。これは専門家が間違いということではなく、認知症の症状には、かなり個人差があると言うことでしょう。

専門家の一般論では現実の問題をカバーしきれないことが多いのも事実です。ただ、認知症の患者、家族も様々ですから、どのケースにもぴったり当てはまることはあり得ません。同じ理由で、実体験がすべてのケースに当てはまる訳でもありません。

とはいうものの、本書は、介護者である著者が専門家に尋ねるという構成なので、バランスがとれています。認知症についての基本的な知識や具体的な対処法、親の財産管理や相続手続きまで、Q&A方式とマンガで、専門的な内容も伝わりやすく工夫しています。

著者が、父親の認知症に気づいたのは母親の入院がきっかけでした。母親は子どもたち(著者と姉)には夫の認知症を隠し続けて「自分が治す」と頑張っていました。子どもたちが、気づいたときには、父親の認知症はかなり進んでいたのです。

そういう事情で、初期の受診はかなわなかった訳ですが、大きな病院なら安心だろうと父親を大学病院に連れて行きます。そこでの医師の対応に疑問を持ち、医師を変えます。その体験が、本書の第3章(p82~85)に書かれています。

著者は、医師が「認知症専門に取り組んでいる医師は少ない。各大学病院に1人くらいはいるが、病院の都合で仕方なくやらされている医師もいるのが実情」(要旨p82)と言っています。疑問に思ったら、医師を変えることも大切なのでしょう。

とはいえ、医師を変えるのは、患者にとっては難しいことです。医師が気を悪くするのではないかと気をつかってしまい、不信感を持ったまま、ずるずると…ということもありがちです。同ページのマンガでは『「知り合いに紹介されて」など、適当な理由を付けて紹介状を書いてもらう』という例を挙げています。

どんな医師が良いのか、医師の対応チェック表(p86)も参考になります。かかりつけ医が充分に対応してくれない場合は地域包括支援センターへの相談をすすめています。長く診てもらっている医師の場合は、さらに難しいかもしれません。しかしやはり、その後の時間を考えれば、認知症に詳しい医師を捜すべきでしょう。

今、介護中の人には、あるあるが満載ですが、他では得にくい情報が第4章の成年後見人に関する記述(p136~139)です。著者は、母親が亡くなった際、遺産相続のために、銀行から成年後見人になるよう求められます。

軽い気持ちで後見人になりますが、かえって面倒なことになって、著者の考えていたような相続や財産管理ができない事態に陥ります。本書の中で行政書士は『メディアでは認知症の親を守るには、成年後見人になるのがベスト」と、メリットだけを伝えているケースが多く、デメリットは全く伝えられていない」(p137)と言っています。

成年後見人制度についての一般向けの本では、費用のこともあまり詳しくは説明されていません。著者の場合、一定期間、成年後見監督人(行政書士)のチェックを受けるよう指示されます。これは拒否できないものですが、1年で24万円もの支払いを命じられます。(p138)

成年後見人制度は、普通の人には非常に分かりにくいものです。しかも、いったんなってしまうと、法的な拘束が生じます。成年後見人制度のしくみ(p138)成年後見人になるとデメリットが多い!(p139)の表でおおよその内容をつかんで、今後のためのイメージをつかんでおくと良いでしょう。

本やネットでも情報は得られますが、ほとんど、成年後見人制度とはなにか、という内容です。今、必要なのではと思っている人は自治体で行われる成年後見人無料相談などを利用して、自分のケースではどうなのかを、直接行政書士に訊くことをおすすめします。

著者からのアドバイスは「この制度を使わなくてもいいように、事前の対策が大事。私の場合、親が元気なうちに親の銀行口座の暗証番号を把握したり遺言書を作っておけば後見人になる必要がなかった。成年後見人になる選択は慎重に」(p139)ということです。

さらに本書には、著者の意図した読者=認知症の親をもつこどもだけでなく、配偶者を介護する人ににとっても、大切な情報とヒントがたくさんあります。マンガだからとあなどることなく、ぜひ、手にとっておきたい1冊です。

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