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【書評39】『未来の年表』河合雅司著, 講談社現代新書

未来の年表
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恐ろしいベストセラーが生まれつつある

『未来の年表』という本がベストセラーになりつつあります。人口減少社会というのは、誰もが知っていることでしょう。しかし、その具体的な中身については、知りたくないという気持ちからか、あまり気にしていないかもしれません。本書は、そんな人口減少社会の具体的な中身について明らかにするものです。

本書は、オビからして、刺激的です。オビには、2020年/女性の半数が50歳超え、2024年/全国民の3人に1人が65歳以上、2027年/輸血用血液が不足、2033年/3戸に1戸が空き家に、2039年/火葬場が不足、2040年/自治体の半数が消滅、2042年/高齢者人口がピークを迎える、と書かれています。

このオビに書かれていない年表で、介護に関係する部分だけ抜き出すと、2021年/介護離職が大量発生する、2025年/ついに東京都も人口減少へ、2026年/認知症患者が700万人規模に、2030年/百貨店も老人ホームも地方から消える、というあたりでしょうか。

呑気(のんき)な人々

「呑気な人々」という言葉は、本書の一番はじめ(p3)において、サブタイトルとして太字で書かれているものです。通常、読者をバカにするようなことというのは、著者としてはとても書きにくいものです。しかし、どうしても「呑気な人々」と言わざるを得ないほど、人口減少社会の深刻な状況は、一般からは理解されていないのでしょう。

数年後には、東京を含めた全ての自治体で人口が減る。日本が消えてなくなるかもしれないといわれているときに、一部の自治体の人口が増えただの、減っただのと一喜一憂している場合ではない。もっと、日本全体の人口減少を見据えた長期的政策を考えるべきである。(p4)

ある意味で、本書がベストセラーになることは、日本の希望でもあります。なんとなく不安に感じてきたことが、こうして未来の年表として明らかにされると、もはや「呑気な人々」ではいられなくなるからです。これらは、どう考えても政治で取り組んでいかないとならない課題であり、同時に、今の政治の速度ではどうにもならないことも理解できます。

たとえば輸血用血液はどうするのか?

本書に示された未来の中で、近未来に起こることで、誰にとっても関係するのが、2027年に輸血用の血液が不足するというものでしょう。これまでは、10〜30代が主に輸血用血液の提供者であり、50歳以上の人々がこれを使ってきました。少子高齢化で、この仕組みが破綻します。

輸血用血液がもっとも必要になるのが、がんの治療(全体の約40%)です。日本人の2人に1人ががんになるのですから、輸血用血液の不足は、大問題です。特に、輸血用血液のニーズが最大になる2027年には、約86万人分の献血が足りなくなると予想されています(p86)。

過去であれば、病院にたどり着ければ助かった命も、輸血用血液が足りないことで、助からないという未来が、もうすぐそこまできているわけです。今のところ、多くの政治家もまた「呑気な人々」に含まれていますから、こうした状況も、誰かがなんとかしてくれることはありません。

日本を救う10の処方箋(第2部)

本書の第1部には、未来の年表がまとめられています。そして本書の第2部は、こうした未来の年表で見えてくる課題を解決するための10の処方箋が示されています。ただ、ここで示されている内容は、処方箋というほどのものにはなっていません。

課題のインパクトを多少は緩和できそうな策が、処方箋とされてしまうあたりに、この問題の恐ろしさが示されてもいます。これらの策では不十分であることが明らかでも、ここで示されている以外に、打てる手立てはありそうもないからです。

これら10の処方箋については、ぜひ、直接本書を読んで確認してみてください。どれももっともなことではあるものの、不安な状態は解消されません。それはすなわち、私たちの未来は、年表がかけてしまうほどに確実に悲惨なものになっており、その本質的な変更は(かなり)難しいということでもあります。

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