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【書評10】『在宅介護―「自分で選ぶ」視点から』結城康博著, 岩波新書

在宅介護―「自分で選ぶ」視点から (岩波新書)
Amazon: 在宅介護―「自分で選ぶ」視点から

著者は現在、淑徳大学教授(社会保障論・社会福祉学)なのですが、現職につく前に介護職・ケアマネージャー・地域包括支援センター職員など介護関係の仕事に10年間従事しています。現場を知る研究者というのは、貴重です。

「介護保険を利用して在宅介護をするにはどうしたら良いのかと」いうことを中心に書かれていますが、著者は、施設介護と在宅介護をうまく組み合わせて利用することで安心できる介護システムができると考えています。

たくさんの介護体験者や専門職員から聞き取り調査をし、在宅介護と施設介護の利点や問題点を明らかにしています。介護保険制度の表面的な説明にならず、利用者の立場から問題点を捉えているところに、著者自身の10年の経験が生きています。

介護の専門職の人も参考にできる充実した内容です。それだけに、一般の人、とくに現在介護中で精神的にも時間的にもゆとりの無い人には読みにくく感じられるかもしれません。しかし、介護を受ける立場の人と介護する人に役立つ情報がたくさんあります。

介護初心者にとって、すぐにでも役に立つ情報として、本書の第4章と第5章を簡単に紹介します。

第4章;在宅介護サービスの使い方(p91~112)

たとえば「2.在宅介護サービスを受けるには」(p99)では、要介護認定について具体的に詳しく述べています。「3.ケアマネージャーを決める」(p105)では、ケアマネージャーの役割について説明し、ケアマネージャーの能力に疑問があったり相性が悪かったりしたら遠慮なく替えるようすすめています。

著者も指摘しているように、介護保険制度はめまぐるしく変わり、利用者が正確に理解することは難しい現状です。ケアマネージャーの能力不足で、充分なサービスが受けられないようなことがあっては困ります。ケアマネージャーを厳しい目で選ぶこと、不満足であれば替えることが大切です。

「6.質の悪いサービス対策」(p120)では、ヘルパーの質も様々なので、不満があったら、苦情相談窓口(市町村の介護保険担当窓口か各都道府県の国民健康保険団体連合会)に相談するようすすめています。「介護業者に直接言いにくいことも言いやすくするための窓口」だと言うことです。「苦情」の実例もあげていて参考になります。

第5章;施設と在宅介護(p124~144)

家族や本人が在宅介護に不安を感じても「何かあったら施設に入れる」と思うことで在宅介護に踏み切れると言い、施設選びのポイント(p135)をあげています。

さらに著者は、問題点を指摘するだけでなく、それぞれの問題の解決策を提言しています。今、この瞬間に困っている人には解決にならないにしても、著者のような専門家だけでなく、多くの人が声をあげていけば実現の道が開けるのではないでしょうか。

気楽に読めるとは言えませんが、自分の老後や親の介護が迫っている人だけでなく、まだまだと思っている人にも、ぜひ読んでいただきたい本です。
 

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