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【書評8】『「看取り」の作法』香山リカ著, 詳伝社新書

「看取り」の作法 (祥伝社新書)

介護から見送るまでについての具体策、その後の悲しみや後悔の思いへの対処法についての本です。

精神科医、立教大学現代心理学部教授である著者が、自分の父親を見送った体験をもとに書いています。父親を亡くして1年足らずの時期に書かれたもので、整理しきれない後悔や迷いを率直に語っています。

「専門家でありながら…」と言いながら、悩んだり後悔したりする様子がそのまま書かれていて、いま、悩みながら介護している人たちにとっては、理路整然としたアドバイスよりも自然にうなずけることがたくさんあるでしょう。介護を終えて、後悔や自責の念にかられている人たちにとっても、救いになる内容です。

著者自身は、最期のぎりぎりに父親を自宅に連れ帰っていますが、「在宅看取りは誰にとっても望ましいか」(p34)という章で、介護者の不安、人手や費用の不足について述べています。また、最近の在宅看取りをベストとする風潮に対して、一方的な価値観の押しつけになる危険性(p40)を心配しています。

第2章の介護や看取りで不足するもの(p48~)の中で、「本来は私がやるべきなのに」という自己否定や「なぜ私がやらなければならないの?」という不公平感、疑問、怒りという自分の感情が一番の敵だと言っています。

自己否定や怒りの感情にとらわれるのではなく、目の前のことに現実的合理的に取り組むことをすすめ、「自治体が行うサービス」「地域のNPO法人やボランティアが行うサービス」「民間企業のサービス」の3種類をフル活用すべきという現実的なアドバイスをしています。

お金の問題(p67)についても、“お金で悩むのはつらい、「自分なりにできるところまで」でいいのではないか”と、理想論ではなく、現実に則した道を選べばいいのだと言っています。

週刊東洋経済から「場所別の『終末期』自己負担額の目安」を転載(p71)していますが、何ごとも計画通りに行くわけではないという著者の姿勢は変わりません。介護や看取りのお金は無駄だと感じてしまったとしても、あなたが悪いわけではなく、今の社会の価値観がそうなっていることが問題だとしています。

自分を責めるのはやめて、それぞれが“自分なりにできることを無理のない範囲でやっていく。いつどんな場合でも、それが「最良の介護、看取り」と言えるのではないだろうか”(p73)と言うのが著者の一貫した姿勢です。

後半は、介護を終えてからの心の問題を中心に、さまざまな人の例をあげて書いています。ここでも、著者自身が抱える後悔や悲しみを隠さずに語っていて共感できます。

KAIGO LAB取材:K.Jさん(40代、公務員、女)

香山リカは、テレビで見かけるタレントっぽい精神科の医者という印象しかありませんでした。何だかよく分からない女医さんや文化人の1人だと思っていました。KAIGO LAB編集部の方から、書評の依頼を受けたときも、正直あまり乗り気ではなかったです。

しかし、理想の最期や理想の介護、看取りなどない、それぞれができる範囲でやるしかないし、それでいいではないかという考え方に励まされました。「それでいい」と言い切らずに「それでいいと思おうよ、あなたは一生懸命やってるよ」と言われている感じです。

私の母はがんで、入退院を繰り返し、闘病生活が5年を越えます。末の妹が母のために仕事を辞めて両親と同居しています。

私は、どうしても仕事中心になってしまい、妹にはほんとうに申し訳ないと思っています。私も母の介護だけでなく妹の将来のことも含めて、できる限りのことをしたいと思っています。

妹は穏やかな性格で何も言いませんが「何で私だけ」と思うこともあるはずです。妹が仕事に復帰できるように、使えるサービスの検討や私が分担できることについて話し合ってみようと思います。

KAIGO LAB取材:K.Rさん(60代、主婦)

母を自宅で看取ってから3年経ちます。入院の度に付き添ってはいましたが、自宅での介護は想像をこえる負担でした。

母が亡くなってから、自分のしたこと言ったことを思い出しては、ずっと自分を責めていました。周りの人は「よくやった」と言ってくれるし、自分でも精一杯やったつもりなのですが、後悔するような場面ばかり思い出しては自分を責めてしまいます。

いまだに介護体験の本を手に取ってしまうのですが、立派な人が多いような気がして、ますます落ち込みそうで、読み通すことは、あまりありませんでした。

この本を読んで、迷ったり失敗したり後悔したりするのが当たり前だと思えました。私が「立派」と思った人たちも、同じように悩みながら介護して、振り返る時に整理して書いたのかなと思います。
 

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